私たちが生活する上で欠かせないものの1つに、お金があります。そしてきっと多くの人が「もっとお金持ちになりたい」と感じていることでしょう。たしかに、お金があれば欲しいものを好きなだけ買えたり、豪華な旅行に出かけたりできるかもしれません。ところが意外にも、統計結果や心理学的研究を見ると、必ずしも「年収の高さ=幸せ」とは言えないようです。さらに興味深いことに、幸せを感じている人には共通するお金の使い方があるとのこと。そこで本記事では、ウェルビーイングの視点から見た「幸せ」と、人生を豊かにするお金の使い方6選を紹介します。ウェルビーイングの視点から見る幸せウェルビーイングとは「肉体的・精神的・社会的にも満たされた状態にあること」を意味する言葉です。世界保健機構WHO憲章に登場する一説で、当初は「健康」について定義されたものでした。しかし最近では「幸せ」や「幸福」と訳されることも多く、人間らしい生活を送る上での重要な基盤として、さまざまな分野に広がりを見せています。日本でも、厚生労働省の指標のもと積極的な取り組みが行われており、今後ウェルビーイングに対する意識の高まりが期待できるでしょう。また欧米各国では、1980年代からウェルビーイングに関する研究が行われ、心理学的なアプローチによる理論的構築がなされています。「PERMAの法則」とは?ウェルビーイングの考えと心理学には深い関係があり、なかでも重要なのが、ポジティブ心理学との関係です。ポジティブ心理学とは、簡単に言うと「人生や社会組織は、本来どうあるべきか」を科学的に調査・研究する学問と考えてください。提唱者のマーティン・セリグマン博士が構築したウェルビーイング理論は「permaの法則」と呼ばれ、多くの分野で採用されています。「Permaの法則」とは、・positive emotion(ポジティブな感情) 嬉しい、楽しい、幸せなどの感情・Engagement(没頭) あることに時間を忘れて集中できる・Relationship(良好な人間関係) 助け合いや、与える精神・Meaning and purpose(意味と目的) 人生の意味や目的を知る・Achievement/Accomplish(達成) 目標達成のそれぞれの頭文字から取られた法則です。ウェルビーイングな人生を送る目安として広く用いられていますので、この記事をきっかけにぜひ参考にしてみてください。お金があれば幸せとは限らない?ウェルビーイングの視点から「幸せ」について紹介しました。ウェルビーイングが提唱する「幸せ」の基準とは、1つではないことがお分かりいただけたと思います。一般に「お金を多く持つことが幸せ」だと考えられています。もちろん経済的な豊かさは誰もが望むものですが、必ずしも「収入の高さ=幸せ」とも言えないようです。ノーベル経済学賞を受賞したアンガス・ティートン教授が行った、年収と幸福に関する調査では、興味深い結果が示されています。研究によれば、年収が約800万円を超えると、それ以降は年収と幸福度の関連性はほとんど見られなかったそうです。こうした調査は日本でも行われており、2019年に内閣府が調査した「満足度・生活の質に関する調査(第1次報告書)」でも、似たような結果が報告されています。これらの調査から、年収と幸福との関係には限界があることがわかりました。また、お金で満たされるのは「幸福度」ではなく、住んでいる家や食べるものといった「満足度」であるとも分析されています。では、より「幸福度」を高めるにはお金をどのように使えば良いのでしょうか。以下では、幸せな人が実践している、お金の使い方について紹介します。人生を豊かにするお金の使い方6選つい無駄遣いしてしまうと感じている方は、次のことを気にしながら、お金と向き合ってみてください。普段から意識するだけでも、少しずつ変化が実感できるはずです。1.生活の充足を心がける生活必需品や住居、医療、教育など、あらゆるものにお金が必要です。そのため、心と体が安心できる環境づくりや、病気になったときに素早く対処できるなど、基本的な生活を維持することを心がけましょう。たとえば、隣人の騒音に悩まされていたり、部屋を散らかしたままにしたりしていませんか?。そうした環境では、リラックスできずストレスもたまってしまいますよね。少しでも生活の質を高めるためには、生活スタイルや環境づくりを見直すことが大切です。2.健康に投資する「不健康でいたい」と思う人はいないはずです。また、今は良くてもいつ何が起きるかわからないのが健康というもの。健康を保つために使うお金は、決して無駄にはなりません。少しお金がかかりますが、運動不足を感じているのであれば、ジムに通うのも良いでしょう。その他、定期的に健康診断を受けることや、栄養のバランスを意識した食事を心がけることも、将来的な健康を維持するうえで大切です。「健康はお金で買えない」と言われますが、健康を維持するためにお金を使うことはできます。豊かな生活をできるだけ長く送るためにも、健康への投資は積極的に。3.学びと成長にお金を使う自分を成長させるためにお金を使うのも良いでしょう。読書はもちろん、現在は動画教材やオンラインセミナーなど種類も豊富です。そのほか、一般受講者向けの特別講義を開催している研究機関もあります。どんな分野であれ、学びには時間がかかるものです。しかしそこから得た経験は人生を豊かにし、場合によっては収入が上がるなどのリターンも期待できます。自己投資に損はありません。興味があることにどんどんチャレンジして、スキルアップを目指しましょう。4.「モノ」の代わりに「コト」に投資する旅行やアクティビティ、文化イベントに参加するなど、人生をより豊かにするための経験に投資するのも良いお金の使い方です。普段の生活では得られないことを経験することで、物事への考え方や見方なども広がるでしょう。社会科学研究者マイケル・ノートン教授の調査によると、体験にお金を使う方が、モノに使うよりも幸福度が高いという結果が報告されています。これは体験の方がより強く記憶に残り、時間が経つほどに「思い出」として美化されるためです。「今さえよければ良い」という考えもわからなくありませんが、素晴らしい経験にお金を使うことも、豊かな人生には必要です。5.社会的つながりや寄付にお金を使う自分のためだけでなく、社会的つながりや他の人々への貢献にお金を使うことも、人生を豊かにするお金の使い方です。人間は社会的動物である以上、他者との関係は切り離せません。直接支援するのはもちろん、慈善団体への寄付などでも支援できます。経済的に困窮する子供たちや、難病に苦しむ人々、あるいは研究機関などへの支援も良いかもしれません。または、クラウド・ファンディングに出資することで、ビジネスオーナーを応援することもできます。近年話題となった著書『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』にも書かれていたように、誰かの役にたつことで幸福度が高まります。6.長期的な財政計画将来の経済的安定や自由を考え、長期的な財政計画を立てるのも良いでしょう。お金や経済の流れを勉強する機会にもなりますし、株や投資信託などの金融資産を適切に運用すれば、資産を増やすことにもつながります。今の損得のみにとらわれず「将来的にどういう生活を望むのか」という視点に立つと、仕事にもヤル気が起き、充実した毎日を送れるようになるでしょう。不安が薄れるのも、長期的な財政計画を立てる利点です。お金を有意義に使うとウェルビーイングも高まる人生を豊かにするお金の使い方を紹介しました。お金がたくさんあることで困ることはありません。しかしそれ以上に大切なのは、どのようにお金を使い、自分や周りの人々の幸福感を高めるかにあります。人とお金は切っても切れない関係にあるからこそ、できる限り有意義に使いたいものです。本記事が、読者の方の有意義な生活に少しでもお役に立てることを願っています。★MiCORAYピックアップ★オカネコ参考資料厚生労働省雇用制作研究会報告書 概要内閣府「満足度・生活の質に関する調査(第1次報告書)p6President Online一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会Business insider japanアセットマネジメントOne『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』アダム・グラント著 三笠書房