大切な家族や友人が落ち込んでいるときや、何かで悩みを抱えているとき、励ます言葉をかけてあげたいという経験は誰しもあるはずです。しかしいざ声をかけようとしても、うまく気持ちを伝えられない場合も少なくありません。場合によっては、不用意な言葉を伝えたがために、相手を傷つけてしまうことも。では、どうしたら悩みを抱える人を傷つけることなく、寄り添えるのでしょうか。そこで本記事では、悩める人へ声をかける注意点や励まし方のポイントを詳しく解説していますので、最後まで読んでぜひ参考にしてください。励ますことの大切さ生きていれば誰しも、家庭や職場、恋愛といった人間関係で悩みを抱えるものです。大抵の悩みは時間の経過とともに薄らいでいくものですが、時には心に大きな傷を負ってしまう場合もあります。そんな中、自分が悩みを抱えているときに、友人や家族からかけられた言葉で気持ちがフッと軽くなったり、救われた気持ちになったという経験がある方もいるのではないでしょうか。人を励ますという行為は、私たちが思っている以上に人間の心に大きな影響を与えており、励まされた人はもちろん、励ます側にもポジティブな効果があるそうです。実際、人を励ましたり優しくしたりすることで、幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」が脳内で分泌され、ストレス耐性も高まると言われています。励ますタイミングを見極める励ましの力は、する方・される方の双方の心にポジティブに働くことがわかりました。しかし悩みを抱えている人を見つけたからといって、むやみなアドバイスや無責任な言葉を投げかけるのは適切ではありません。相手を励ます際に何よりも大切なのは、励ますタイミングです。というのも、人間はツラさや悩みを抱えているときには、まずは1人で静かに落ち着きたいもの。たとえば、仕事で失敗した直後に「大丈夫だよ」と言われても説得力がありませんし、それどころか言われた方は嫌みに感じてしまう場合も考えられます。そのため、励ました本人にその意図がないとしても、受け取る側はネガティブに捉えてしまう可能性があるので、相手の様子をよく見てから励ますことを心がけましょう。相手のプレッシャーになることも悩んでいる人を元気づけたい、なんとかしてあげたいという気持ちは多くの人が抱く気持ちであり、尊いものです。一方、励ましの言葉が相手にとってプレッシャーになる場合もあります。たとえば、懸命に努力したけれど成果が出なかった、あるいは失敗してしまった相手に「次も頑張って」と励ましたとしても、かえって重荷に聞こえてしまう場合があります。そのため、悩んでいる人を励ます際には、相手の心境をくみとり追い打ちをかけない言い回しが求められます。励ますタイミングと同様に、相手の状況や心境を考えた言葉がけを意識してみてください。「頑張って」は応援ではない?悩みを抱えている人につい言ってしまう言葉の代表例に「頑張って」があります。しかし「頑張って」という言葉は、悩みを抱える人にはあまり効果的ではないのをご存じでしょうか。実は「頑張って」という励ましは、気力がありポジティブな状態の人に向けて使う言葉であり、落ち込んだり悩んだりしている人には逆効果と言われています。というのも、悩んでいる人が「頑張って」と言われた場合、その心の中では、「まだ頑張り足りないのか・・・」「これまで全力で頑張ってきたのに」という気持ちが起こり、相手をさらに追いつめてしまう場合も。とくに伝えた相手が「マジメで努力家の人」の場合は、さらに無理をして頑張ったり、自分の気持ちが理解されないという孤独感を抱える傾向にあるため、「頑張って」という言葉には十分な注意が必要です。励ます側の心境も大切悩んでいる人を励ます際には、不用意に言葉をかけず、相手の状況や心境をよく観察することの大切さをお伝えしました。これは言い換えれば、相手を励ます際には「励ます側の心の状態」が大切であるとも言えます。たとえばMiCORAY読者の皆さんの中にも、励ましてもらったにもかかわらず、「勝手なことを言われた」「アドバイスなんて求めてない」という経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。これは、「望んだことが得られない」や「必要としていない」ものが与えられた際に起きる心理状態です。そのため、悩みを抱える人に接する際には、最初から解決策を提案するのではなく、まずは「落ち込んでいることに理解や共感を示す」ことを意識すると良いでしょう。相手を思いやる励まし方のポイント5つここまで悩みを抱える人への接し方の注意点を紹介しました。最愛の人や大切な人が苦しんでいるとき、言葉を選ぶのはなかなか難しいものです。上記の通り、不用意な言葉は逆効果になる場合も少なくありません。そこで以下では、悩みを抱える人を励ます5つの重要ポイントを紹介します。相手の状況によって対応はさまざま考えられますが、まずは以下のことを意識してみてください。1.寄り添っている気持ちを伝える悩みを抱える人に接する上で大切なことは、「1人ではないから悩みすぎないで」「いつでも相談にのるよ」と相手に寄り添う気持ちを伝えることです。悲しいときやツラいときには、どんな人でも支えが必要なもの。相手の心境や状況をよく観察しつつ、相手にとって「必要なときに」サポートする姿勢をみせてあげてください。いつでも話を聴いてくれる相手がいるだけでも、悩みを抱えている人の心は軽くなるものです。そして、徐々に相手の心が開いた段階で、第3者としての意見を伝えてみてください。2.相手から話すのを待つ悩みがあっても自分から話を切り出せず、抱え込んでしまう人も多いでしょう。その場合は相手が話をするのを待ってから、「なにがあったの?」と話を切り出してください。話の助け船を出すことで、相手も感情を表に出しやすくなります。人間は相手に理解されたい生き物である一方で、自分の殻に閉じこもる傾向があります。そのため、相手が心を開いて話してくれるまで、辛抱強く待つことも重要です。3.起きた出来事ではなく努力を励ます「頑張って」という言葉は、相手を傷つける可能性があることは上述しました。とくに、結果が出なかった人への「頑張って」の一言には注意が必要です。というのも「頑張って」という言葉は、結果のみを重視した声かけであり、それまでのプロセスへの理解が足りていません。人は能力よりも「努力」を褒められた方が自己効力感が上がることがわかっています。そのため、思った成果が出せなかった相手には「これまでよく頑張ったね」といった、過程に目を向けた声かけがベストです。そうすることで相手の自己効力感が満たされ、次へのチャレンジへのきっかけになるかもしれません。4.問いかけも大切悩みを抱えている人へ声をかける上でもう1つ大切なのは、相手への問いかけです。相手の気持ちを引き出すためには、「今どういう状況なの?」や「どんな風に感じている?」といった現状を引き出し、話したいことをすべて発散させてあげましょう。自分が発した言葉には、意外に注意が向かないものです。その際のポイントは、相手が発した言葉を反復すること。反復することで相手の気持ちに寄り添い、相手も自分自身の現状を客観視しやすくなります。たとえば、「仕事で失敗した」という同僚には、「仕事で失敗したの?その原因はなんだと思う?」などと聞いてみると良いでしょう。5.ムリに励まそうとしない場合によっては「どのような声をかけて良いかわからない」という場面もあるでしょう。その場合はムリに励まそうとしないことも重要です。ムリに励まそうとして取り繕った言葉は、相手の状況によっては冷やかしや、うそに聞こえてしまう場合があります。なにも言葉が浮かばないのであれば、それも正直な本音です。「以心伝心」という言葉があるように、たとえ言葉が見つからなくても、肩にそっと手を置いたり、そばにいるだけでも安心感は伝わります。悩んでいる人への声かけは、相手への思いやりが大切自分にとって大切な人が悩みを抱えていたら、なんとか助けたいと思うのが人間です。そしてその方法は、励ましや慰めの言葉であったり、援助であったりなどさまざまあります。しかし、いずれにおいても大切なのは、相手への思いやりの心。そのためには相手が何を望み、どのような心境なのかをよく観察するのが大切です。本記事にピンと来た方は、ご自身のあり方を振り返る良いチャンスかもしれません。自分と自分の周りにいる人を幸せにしながら、ウェルビーイングな毎日を楽しんでくださいね。★MiCORAYピックアップ★・特定非営利活動法人仕事の未来・小学館Domani・キレイライフプラス・STRETCH CLOUD・All About参考資料Direct Communication励ます言葉の使い方、励まし方順天堂大学GOOD HEALTH JOURNALコロナ禍に。愛情ホルモン「オキシトシン」への期待WORKPORTplus 励ます言葉がわからない時〜大切な人を温かく元気づける方法〜リクナビNEXTジャーナル やってはいけない「励まし方、効果的な「励まし方」DIAMONDonline【精神科医が教える】落ち込んでいる人への最高の対処法茨城大学教育実践研究30(2011)励ましの言葉の受け取り方に関する一考察中野友貴・正保春彦