近年、新しい生活様式として注目を集めているウェルビーイング。読者の方の中にも、ウェルビーイングを意識した生活を送られている方も多いのではないでしょうか。ウェルビーイングは日本国内でも徐々に広がりつつあり、日本を代表する自動車メーカーのトヨタも、ウェルビーイングの精神をもとに新たなアジェンダを発表しました。また、地方自治体にもウェルビーイングの考えが浸透し始め、地域の風土・特産品・伝統文化などを生かした取り組みが次々と計画されています。そこで本記事では、地域社会に広がるウェルビーイングの取り組みについて4つ紹介します。みなさまのお住まいの地域も含まれているかもしれませんので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。ウェルビーイングへの日本政府の取り組み日本政府が積極的にウェルビーイングを推奨していることをご存じでしょうか。身体的・精神的・社会的な「幸福」を目指すウェルビーイングの試みは、内閣府をはじめとして、さまざまな省庁と連携しながら徐々に広がりを見せています。2021年の7月には、政府主導のもと「Well-beingに関する関係府省庁連絡会議」が開かれ、府省庁を越えた話し合いが行われました。例えば内閣府では「子ども・若者のウェルビーイングに係る調査」を新設し、若者の生活環境や幸福度に関する調査を積極的に行うことが決定されています。また経済産業省においては「健康経営度調査」を実施し、働く人がよりウェルビーイングに働ける環境づくりを目指す方針を固めました。この調査の大まかなポイントは次の2つに絞られています。アプセンティーイズム・・・なんらかの身体的・精神的な不具合により仕事ができない状態。ワーク・エンゲージメント・・・働く人の「熱意・没頭・活力」の3点が充実した状態であること。このように、ウェルビーイングの取り組みは、日本全体で活発になっているのがわかりますね。そしてこの動きは地方自治体へも広がり、各地域の特色を活かしたさまざまなウェルビーイング政策が行われています。次の項目では、具体的な取り組みについて紹介します。参考:内閣府ウェルビーイングの取り組みは地方自治体によりさまざまある現在、全国のさまざまな地域において、ウェルビーイングに根ざした街づくりが計画されています。今回は岩手県と富山県、そして東京都荒川区、埼玉県入間市のウェルビーイング政策について見てみましょう。もしこれらの地域にお住まいの方がいましたら、ホームページなどをご参照いただき、積極的にウェルビーイング政策に参加するのも良いかもしれません。いわて県民計画1つ目は岩手県の取り組みです。岩手県では「東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわて」を基本目標とし、地域社会の幸福や将来像、社会福祉の向上を目指しています。幸福感に関わる12の分野をもとに、健康・余暇、環境保全などさまざまな政策分野を決め、県民1人1人の幸福を育む取り組みを行っています。また、幸福に関する岩手県独自の指標「いわて幸福関連指標」を定めているのも特徴です。その他、岩手県では10年後の未来を見越した、「11のプロジェクト」の計画も見逃せません。自動車や半導体関連産業の充実をめざす「上川バレープロジェクト」をはじめ、ビッグデータを活用し、県立・大学病院と連携した新しい医療体制の構築を掲げる「億幸づくりプロジェクト」、再生可能エネルギーを促進する「水素利活用推進プロジェクト」などが計画されています。これらは東日本大震災で大きな被害を受けた、岩手県ならではの取り組みと言えるでしょう。県ホームページでは詳しい計画が掲載されていますので、岩手県民の方はもちろんのこと、他県の方もぜひご覧ください。参考:岩手県HPウェルビーイング先進地域、富山ウェルビーイングを積極的に推進しているのが、富山県です。富山県では新田知事の主導のもと「幸せ人口1000万〜ウェルビーイング先進地域、富山〜」を打ち出し、富山県の活性化を目指しています。富山湾と立山連峰を有する富山県は、全国でも有数の自然環境を背景に、「真の幸せ」をキーワードとした街づくりを行っています。また、2021年2月には「富山県成長戦略会議」が設置。翌年2022年には、富山県にゆかりのある実業家や専門家らによる新たなプロジェクト「成長戦略の6つの柱」が打ち出されました。この6つの柱には次のものが掲げられています。1.真の幸せ(ウェルビーイング)美しい街並みや食文化に加え、女性の幸福の追求、県内への人の出入りの活性化を目指す。世界へ羽ばたく人材を育てる基地づくり。2.まちづくり 地域社会を主役とした官民連携の組織を生み出す。 自然豊かな富山県と新しい文化を融合させた、持続可能なプロジェクトを計画。3.ブランディング 「富山といえばウェルビーイング」と呼ばれるようなブランディングの確立。 県外からの旅行者が、富山の日常を体感できる観光への取り組み。4.新産業支援 生涯学習を目的としたリカレント教育の推進。 多様性を受け入れ、積極的な社会参加を受け入れる学校教育。5.スタートアップ支援 上場企業1社を創出。さらに大学と連携したベンチャー企業を10社設立。 事業承継を目的とした「跡継ぎベンチャー」の拡充。6.県庁のオープン化 業種の垣根を超えた県庁職員の育成。 能力のある若者や女性職員の積極的登用。 このように、富山では地域性を最大限に活かしたウェルビーイングな県政が計画されています。参考:富山県HP東京都荒川区民総幸福度東京都荒川区もウェルビーイングを目指す区政として注目を集めています。荒川区では、独自の幸福指標「荒川区民総幸福度(GAH)」を研究しており、富山県と同様に6つの分野が掲げられています。6つの幸福分野は次の通りです。・健康・福祉・子育て・教育・産業・環境・文化・安全・安心例えば産業の分野では、経済的な豊かさを重要視しつつ商店街の活気を高めることを目的としており、地域産業の振興を目的にしています。また、子育てや教育にも力を入れており、地域全体で子どもや子育て世代の幸福度を高める試みが特徴と言えるでしょう。参考:RILAC荒川区自治総合研究所埼玉県入間市地域別ウェルビーインへの取り組みの最後は、埼玉県入間市です。埼玉県南西部にある入間市はお茶の名産地。なかでも「狭山茶」は、「宇治茶」、「静岡茶」と並ぶ日本3大名茶としても有名なため、1度は飲んだことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。2022年度SDGs未来都市に選出された入間市は、2030年を目標に「健康と幸せを実感できるWell-being city いるま」を計画しており、経済面、社会面、環境面の3つの面で改革に取り組むことが計画されています。なかでも注目すべきは社会面での取り組み。今後入間市は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、高齢者の健康寿命の向上や、利用者の都合に合わせたデマンド交通の普及に務める「ウェルネス・シティ」の実現を目指します。その他、CO2排出ゼロを目指す「ゼロセロカーボン・シティ」の実現も視野に入れています。そのため、入間市の取り組みは、まさにウェルビーイングな街づくりのモデルと言えるでしょう。また、入間市の杉島市長はSDGsを積極的に進めており、2022年に開催されたサステナブル・ブランド国際会議2022横浜では、セッション・スピーカーとして登壇し、入間市の取り組みをPRしました。参考:入間市HP地域に広がるウェルビーイングの取り組み今回は地域に広がるウェルビーイングの取り組みを4つ紹介しました。どれも地方自治体の魅力を活かした活動で、今後の展開が楽しみですね。もしかしたら、お住まいの地域も含まれているかもしれません。今回紹介したケース以外にも、さまざまな地域でウェルビーイングの取り組みが計画されています。「自分の住んでいる地域はどうかな?」と気になった方は、県庁や市のホームページをチェックしてみてください。実際にイベントなどに参加することで、ウェルビーイングについての理解がより深まるはずです。★MiCORAYピックアップ★めぐるとやま