日本の長期休暇といえば、ゴールデンウィーク、お盆、年末年始が思い浮かぶのではないでしょうか。それ以外にも、勤務年数に応じて最大20日の有給休暇が与えられます。2019年4月に労働基準法が改定され、年5日の有給休暇取得が義務化されました。有給休暇は2年で失効してしまいますので、いつの間にか失効してしまったり、残った有給を退職時にまとめて使った経験があるのではないでしょうか。また、職場環境にもよりますが、有給休暇を取得しにくいと感じている人も多いかもしれません。海外では休暇に対する考え方も文化も、日本と大きな違いがあるのです。世界の有給休暇消化率エクスペディアが世界16地域を対象に調査した『有給休暇・国際比較調査2022』が発表されました。1位は台湾、2位は香港、シンガポール、ドイツ、イギリスの順で続きます。日本は、ワースト2位の60%、最下位は35%のアメリカでした。また、調査によるとヨーロッパ諸国は、有給支給日数が27〜30日と他の地域に比べて圧倒的に多く、有給休暇制度が充実しているのが分かります。一方、タイは12日などアジア諸国は有給支給日数が少ない傾向にあります。アジア諸国の中では、日本は20日と支給日数は多い方ですが、取得日数は12日と他の国とあまり変わりません。そのため、日本は有給消化率が世界的に見て低いという結果になっています。海外の有給休暇事情国際労働機関による条約では、有給休暇について定められています。多くの国で、有給休暇は法令で定められていますが、国によって取得日数や方法はさまざまです。台湾有給取得率が世界1位だった台湾は、有給取得について労働法で決められています。勤続年数に応じて有給休暇が最大30日与えられます。有給付与のルールは日本に似ていますが、最大日数が日本より10日ほど多いのは、日本に比べて祝日の日数が少ないのが要因でしょう。台湾の有給消化率が高いのは、1年以内に使い切れなかった場合、労働法に買取義務が記載されているからだと考えられます。日本は法律で決められた有給は原則買い取りはできませんが、台湾は消化しきれなかった有給は翌年給与として支給しなければならないのです。企業としては、休んでもらわないと支出が増えてしまうので、有給を積極的に取得することを求めているのでしょう。シンガポールシンガポールでは、有給休暇について雇用法で定められています。日本と同じように、勤続年数によって日数が決まり、最大14日の有給休暇が与えられます。14日は少ないと感じるかもしれませんが、シンガポールでは、有給休暇の他に病気のときに取得できる有給病欠休暇が14日ほど与えられます。日本では、病気になったときのために有給を残している人も多いのではないでしょうか。多少の体調不良であれば、風邪薬を飲んで出勤した経験もあるでしょう。シンガポールでは、病気になったときに有給病欠を使えるので、有給を残しておく必要も、無理して出社する必要もないのです。そのため、シンガポールの人々は、有給休暇をバカンスのために使うことが多いそうです。ドイツドイツでは、週5日勤務であれば年20日、週6日勤務であれば年24日の有給付与が法律で決められています。しかし、これはあくまでも最低ラインで、企業が追加で有給を与える場合が多いそうです。実際は30日を超えることがほとんどで、エクスペディアの調査では90%と消化率はとても高い傾向にあります。また、ドイツでは、法律で有給休暇を2週間連続で消化する権利が与えられます。日本では、大型連休に合わせて有給休暇を取得することもありますが、長期の休暇が取りづらいことは多いのではないでしょうか。権利として与えられるドイツでは、長期休暇を取りやすい環境が整っていると言えるでしょう。アメリカアメリカは、他の国と違い、有給休暇が法令によって定められていません。有給休暇は、企業と労働者の契約によって決まり、一般的には、年間2〜3週間の有給休暇を設定している企業が多いそうです。そのため、雇用契約時に有給休暇を何日取得できるかどうかは、労働者の交渉次第となります。アメリカでは、休暇は交渉で勝ち取ったものと考えられていることが多く、休暇を取るのは当然の権利と考える人が多いそうですよ。休暇を取りやすくなるようにサポートし合うのが当たり前の環境で、自分の休みを返上して他の人に休みをとらせることもあるそうです。海外特有の休暇と過ごし方日本では、お盆やお正月などの長期休暇は実家に帰省し、家族や親戚と過ごす人も多いのではないでしょうか。日本のお盆やお正月のように、海外にも特有の休暇があり、過ごし方も多種多様です。バカンスヨーロッパでは、有給休暇を活用し、毎年3〜4週間の夏のバカンスを取得してリフレッシュします。別荘に出かけたり、バカンス用の施設を借りて、1ヵ所に滞在することが多いようです。予定をぎっしり詰めるのではなく、釣りや読書などをしながら、のんびりと過ごし、休むことを満喫するそうですよ。バカンス中は仕事を持ち込まず、完全に仕事から離れることが一般的で、夏の間は、お店も休暇が優先でほとんど閉まっているそうです。ヨーロッパでは、夏の間はほとんどの仕事が止まると言われることもあります。クリスマス休暇日本でも、クリスマスはパーティーをしたり、プレゼントを交換したりしますよね。アメリカとヨーロッパでは、クリスマスは大きなイベントで、クリスマス休暇が存在します。アメリカでは、12月25日と1月1日が祝日ですので、有給休暇を合わせて長期休暇にするのが一般的です。ヨーロッパでは国によって多少の違いはありますが、12月20日頃から年明け数日までクリスマス休暇を取ることが多いそうです。家族とゆっくりと過ごすことが多く、日本のお盆やお正月に近いのかもしれませんね。サンクスギビングデーアメリカは11月の第4木曜日、カナダは10月の第2月曜日にサンクスギビングデーと呼ばれる祝日があります。前後の土日に合わせて連休になり、有給休暇を合わせて長く休みを取る人も多く、学校は1週間休みになります。サンクスギビングデーは、元々は神様に収穫を感謝する日でしたが、最近は宗教的な意味合いはなく、身近な人に感謝する日とされているそうです。家族や親戚と集まり、七面鳥の丸焼きを食べることが一般的だそうですよ。実家に帰省して、親戚一同が集まることが多い日本のお正月やお盆に似ているのかもしれません。休暇についての考え方は国によってさまざま日本と海外の休暇について紹介しましたが、国によって休暇についての考え方は多種多様でした。日本では企業によりますが、休みたい日があるけれど、繁忙期は周りに迷惑をかけてしまうかもしれないとためらったこともあるのではないでしょうか欧米の国は、休みは自由に決めるもので、権利なので使って当然だと思う人が多いようです。休暇を大切にすることで、心も体もリフレッシュできますし、良い仕事に繋げることができるでしょう。日本でも、テレワークやフレックスタイム制など多様で柔軟な働き方が少しずつですが、普及し始めています。休暇についても考え方が変わっていき、誰もが自由に取得できる環境になると良いですね。★MiCORAYピックアップ★・阪急交通社・HIS参考文献エクスペディア 世界16地域 有給休暇・国際比較調査2022