私たちは日々さまざまな体験をしています。良い体験をすれば、喜びを感じてポジティブな気持ちになり、また同じ体験をしたいと思いますよね。嫌な体験をすると、落ち込んでネガティブな気持ちになり、忘れたくてもなかなか忘れられないという経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。体験によって、私たちの心には変化が起こり、次の行動につながっていきます。どのような心の変化が起こるかを知っておくことで、嫌な体験をしてしまっても、正しく対応できるようになるかもしれません。ひとつひとつの体験を大事にして、これからの人生の糧にしましょう。成功体験と自己効力感成功体験によって、モチベーションが上がったり、自信につながることがありますよね。成功体験とは、心がうまくいったと判断し、脳が快感を感じている状態です。快感を感じると、心では同じ行動や気持ちを繰り返そうとする仕組みが生まれます。成功体験を繰り返すことで、また体験できるであろうという自信を持つようになり、前向きに取り組めるようになるのです。これを自己効力感と言い、何かに熱中したり、困難な状況を乗り越えるために重要な概念です。自己効力感が高くなれば、自分を信じて行動することができるので、失敗しても立ち直りが早かったり、何があっても自分を信じて前向きに取り組むことができるでしょう。自己効力感を高めることで、喫煙や肥満をコントロールできるのではないかとも言われているそうですよ。自己効力感は成功体験だけでなく、代理体験でも高めることができます。代理体験とは、自分と同じような立場の人の成功体験を見て、あの人ができたのであれば自分も成功できるのではないかという気持ちになる疑似的な成功体験のことです。逆に言えば、自分の成功体験が誰かの自己効力感を上げる手助けになっている可能性があるのです。成功体験は、良い方向に働くことがほとんどですが、無意識に悪い行動を起こしているかもしれません。人に強く当たることでピンチを切り抜けたという成功体験をした人は、同じようにまた誰かに強く当たってしまう可能性があるのです。成功体験は気付かないうちに、私たちの気持ちや行動、こだわり、欲求に反映されていきます。自分の行動が過去の成功体験によって、悪い方向に動いていないかどうかを一度振り返ってみましょう。自己効力感を高めるためにも、成功体験を繰り返すことが大切です。大きな成功である必要はありませんので、自分のできることから始め、小さな成功体験を少しずつステップアップさせ、積み上げていきましょう。成功体験で脳が快感を感じ、同じ行動や気持ちを繰り返そうとするので、自己効力感アップにつながります。辛い体験を思い出したら深呼吸とリラックスを!心が傷つくような辛い体験をして、心と体に不調をきたしてしまった経験がありませんか。辛い体験をすると、心の中はネガティブな気持ちになり、人間は反射的に戦う、逃げる、かたまるのいずれかの行動をとります。このような反射的な行動は、危険から身を守るために欠かせない心のしくみです。そして、一度辛い体験をすると、関連するものを見たり聞いたりするだけで、何も問題ないのにも関わらず、ネガティブな気持ちを強く感じてしまうことがありますよね。ネガティブな気持ちになる行動を避け続けていると、いつまでたっても関連するものを見聞きするのが怖くなってしまいます。例えば、キッチンで火事を起こしてしまった場合、身の危険を感じ、慌てて家から飛び出しますよね。それから時間がたっても、キッチンに行ったり、コンロの火を見るだけで、恐怖を強く感じるようになり、キッチンに行けなくなったり、コンロを使えなくなってしまいます。心が傷つくような辛い体験をすると、心の警戒が強まっている状態になり、普段の生活の中でも心と体が危険な状態にあると勘違いするようになってしまうのです。気付いたら頭がボーっとしてしまったり、急に辛い体験を思い出してネガティブな気持ちになってしまったら、周りを見渡して今は安全だと確認し、ゆっくりと深呼吸をして心を落ち着かせましょう。自分がどのような方法でリラックスできるかを見つけておくのも大事です。リラックスできる場所に行ったり、行動をすることで気持ちを落ち着かせ、ネガティブな気持ちを忘れることができます。辛い体験を思い出し、ネガティブな気持ちになっていることに自分で気付き、深呼吸やリラックスで対処することを繰り返すよう心がけましょう。いつの間にか辛い経験を思い出しづらくなっていくと思います。ポジティブな体験よりもネガティブな体験ばかり覚えているのはなぜ?ポジティブな体験よりも、ネガティブな体験の方が詳細に覚えているという方も多いのではないでしょうか。楽しい時間はあっという間と言う言葉がありますよね。楽しい体験をしているときは、満たされている状態なので、細かい情報には注意が向かないのです。嫌な体験をしているときは、脳がネガティブなことだと判断して、あらゆる情報を集めて危険に対処しようと、脳が神経質になっているため、なかなか時間が経ちません。交通事故にあったときスローモーションのように見えると聞いたことがあるかもしれませんが、それは細かい情報が脳に刻まれているためなのです。ネガティブな体験は、次に同じようなことを経験しないように、脳が詳細に情報処理をするようになります。一方、ポジティブな体験は、自分にとっては危険ではないので、細かい部分まで情報処理されないふわっとした記憶になります。脳は良いことよりも、リスクを回避する方向に働きやすいため、ネガティブな体験が記憶に残りやすいのです。ネガティブな体験を意味のある体験にネガティブな体験は誰しも経験することだと思いますが、忘れる必要はありません。忘れたいと思うような体験が人生の宝物になる可能性があるのです。ネガティブな体験を未来の糧になる忘れてはいけない体験、意味のある体験に転換してみましょう。ネガティブなまま放置するのではなく、ポジティブに転換するために、考えて行動することが大事なのです。例えば、友人と大きな喧嘩をしてしまったとします。そのまま距離を置き、関わらなくなってしまってはネガティブな体験のままになってしまいます。しかし、喧嘩の原因についてしっかりと考え、相手の気持ちを理解し、お互い向き合ってしっかりと話し合うことで、喧嘩の前よりも仲を深めることができるかもしれません。このように、ネガティブな体験を意味のある体験に転換しようとすることが大事なのです。忘れたくなるようなネガティブな体験も、落ち着いて一度しっかりと向き合ってみましょう。体験は人生の糧になる私たちは、さまざまな体験を繰り返して日々生きています。成功体験は、心を強くすることができ、前向きに行動して新たな成功体験をうみます。ネガティブな体験をしてしまうこともあると思いますが、気にしすぎる必要はありません。しばらくはつらいかもしれませんが、深呼吸やリラックスで少しずつ対処していきましょう。落ち着いてきたら、ネガティブな体験もポジティブな体験に変換して、すべての体験を人生の糧にしていきましょう。