はじめに「ここに100万円あります。何に使ってもあなたの自由です。」ともし言われたら、あなたは何にお金を使いますか?「旅行に行きたい!」「欲しいものを全て買う」「両親にプレゼントをしたい」etc……人それぞれ、思い浮かぶものがあるでしょう。そのお金の使い方次第で、あなた自身への影響や幸福度が変わるかもしれません。本記事では、お金の使い方による人への影響や幸福度に関して研究データをもとにお伝えしていきます。他人のためにお金をつかうと幸せになれる誰かにプレゼントすることで、自分自身も嬉しいと感じたことはありませんか?「誰かのために何かしたい」「人の喜ぶ顔がみたい」といった利他的な心は、ヒト特有とも言えます。ブリティッシュコロンビア大学の心理学者、エリザベス・ダン博士率いるチームは、お金の使い方と幸福度をはかる実験を行いました。実験では、自分のためにお金を使った人と、お金を他人にあげた人に5段階で幸せを評価してもらいました。すると、お金を他人にあげた人の方が幸せ指数が高い傾向がありました。また、会社員のボーナスの使い道も調査したところ、社会のためにボーナスを使った人では、社会のためにまったく使わなかった人よりも、幸せ指数が20%高かったという結果がでました。2008年に『サイエンス』誌に発表されたこの研究結果から、自分自身にお金を使うよりも他人や社会のためにに使う方が幸福度が高いことが立証されました。人にお金を使うと幸福な理由では、なぜ人のためにお金を使うと幸福を感じるのでしょうか?実は人は、3つの基本的な欲求を持っています。関係性欲求・有能性欲求・自律性欲求 です。むずかしい言葉ですが、簡単に言うと、周りの人と良い関係でいたい、有能でいたい、自分の行動は自分で決めたいという欲求です。人のためにお金を使うことで、これらの欲求が満たされやすくなるのです。友人の誕生日にプレゼントを贈ると、きっと友人は喜んでくれますね。お互いの関係もよくなるでしょう。社会的問題に募金をすることで、自分が役に立っていると感じられることもあるでしょう。また、人とのつながりでは、オキシトシンという幸福物質が分泌されます。オキシトシンは、ストレス低減やポジティブ効果もあると言われています。さらに、学習意欲や集中力を高めるという効果まで。誰かと一緒にいて、楽しい、嬉しい、安らぐと感じる幸せは、社会的な生き物である人にとって大切な幸せの形と言えるでしょう。このように、他人のためにお金を使うことで、3つの基本的な欲求が満たされやすいことと、つながりによるオキシトシンの効果により幸福感を感じると考えられます。長くつづく幸せには、モノではなく体験を買おうまた、モノを買うのではなく、体験にお金を使うことで長く幸福を感じることができます。モノへの投資、体験への投資。それぞれ、どんな感情がわくのでしょうか。欲しかったモノを手にしたとき、人は喜び幸福感を感じます。この時、脳内ではドーパミンという神経物質が出ています。ドーパミンは脳を興奮させるので、ドーパミン的幸せは高揚感が伴います。しかし、その高揚感の幸福は長くは続きません。しばらくすると、また他のモノが欲しくなり、それを手にしてドーパミン的幸福を感じる。そしてしばらくするとまた欲しくなると繰り返します。モノで得られる幸福感は一時のものである場合が多いのです。一方、体験や経験で得られる幸福感は、モノで得られる幸福感とはちがいます。「人間の脳は多様性や新規性のある移動によって、よろこびや幸福を生み出す」という研究結果があります。人はさまざまな体験やあたらしい体験のために移動することで、脳が快楽を感じるそうです。また、移動距離が長ければ長いほど、日々の生活での幸福感も高いことが分かっています。移動によって幸福感が感じられると、また移動して幸福感を感じるという正のスパイラルが起きるのです。これは、新しい体験が一時的な幸福ではなく、長く続く幸福であると示しています。時代による価値観の変化現代社会は、時代の変化とともに、モノの豊かさから心の豊かさへと価値観がうつってきました。地位材から非地位材への価値観への変化ともいいますね。地位材は、モノやお金など他人と比べられる財。非地位材とは、幸せや健康など、他人と比べるものではなく、自分のなかで感じていく財です。最近増えている「体験型」のプレゼント。「リラックスエステプラン」「人気店でランチプラン」「温泉・サウナ体験ギフト」etc……このような体験のプレゼントというのも、心の豊かさや癒し、満足感を求めている人が増えてきたからこそなのでしょう。人や体験に投資することでの5つのメリットお金を人や体験に使うことで幸福度をより感じることをお伝えしてきましたが、具体的にはどんなメリットがあるでしょうか?5つのメリットをご紹介します。1. 人との絆が深まる大切なあの人、いつもお世話になっているあの人のためにと考えてお金を使うことで、その方との絆が深まるきっかけになるでしょう。人は誰かに気にかけてもらえると嬉しいもの。自分のために考えてくれたら嬉しいものですよね。同じ時間を過ごしたり、相手を思う気持ちがつたわることで、安心感や信頼が生まれ、絆が深まっていくでしょう。2. 感動が味わえる体験することで、感動を味わう機会が増えます。興味があることを体験することで、本で知るのとはちがう心の動きがあるでしょう。たとえば、サッカーが好きでサッカー観戦に行けば、試合のリアルな感動が味わえます。もちろん、テレビで見ても感動はありますが、その感動が何倍にもあるのがリアルの醍醐味。絵画も、写真で見るのと、本物を見るのでは感じるものがきっとちがいますよね。ピンときたら体験してみることで、心を揺さぶられるような感動を味わえるのではないでしょうか。3. 視野が広がる人との交流やさまざまな体験によって、自分ひとりでは考えなかったような視点が広がります。人と話すことは、自分とちがう考え方、見方を知ることができる絶好の機会です。たとえば、旅行で知らない場所に行ったときはどうでしょう。海外にいけば、日本にいると当たり前と思っていたことが全く当たり前ではなかったと気づくことも多いはず。日本国内でも、地域によって、風習がちがい、食べ物もさまざまです。旅行以外でも、さまざまな体験や交流で視野はおのずと広がっていくでしょう。4. 豊かな記憶がつみかさなる人は生きていくなかでさまざまな記憶がつみかさなっていきますよね。体験や人との記憶は、数年経っても何度もよみがえってくるものです。たとえば、奈良の大仏を見に行くという体験。教科書で見たことがあるのと、実物を見ることのちがいは何でしょう。まず、写真で見ただけだと感じられない大きさを体感できます。見ることでより興味を持って詳しく知りたくなり、実際にもっと学びを深めていく場合もあるでしょう。写真より、鮮やかで豊かな記憶として残ると多くの方が感じるのではないでしょうか。5. 精神的な健康につながる人とよい関係が築けることは、幸せホルモンのオキシトシンがでて、精神的に満たされ健康につながります。人は社会的な生き物です。人とのあたたかいつながりは、気持ちを安定させ幸福感を感じさせてくれるのです。また、人は自己決定することで、しあわせを感じると言われています。自分で決めてさまざまな体験を行うことは、日々の満足感をきっと高めてくれるでしょう。おわりにお金の使い方によって、人にどんな影響や幸福度の変化があるのかをお伝えしてきました。体験や人への投資は、ウェルビーイングにつながるお金の使い方と言えます。もちろん、体験や人への投資だけでなく、モノへの投資も、バランスよくお金を使って、日々の幸福度を高めていけたらいいですね。参考資料「幸せをお金で買う」5つの授業 ―HAPPY MONEY精神科医が見つけた 3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法 樺沢紫苑 (著)科学を好きな人を増やすメディア、ナゾロジー!世の中にある沢山の不思議を冒険しよう!Deci, E. L., & Ryan, R. M. (2000). The "what" and "why" of goal pursuits: Human needs and the self-determination of behavior. Psychological Inquiry, The "what" and "why" of goal pursuits: Human needs and the self-determination of behavior. (apa.org)M Ryan 1, E L Deci(2000)Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-beingSelf-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being - PubMed (nih.gov)