生きていれば、山あり谷あり。いい事からわるい事まで、さまざまなことがありますね。しかし、人生のなかで同じような困難に直面しても、乗り越える人とつぶれてしまう人がいます。反応は人によって違います。ピンチをチャンスに変え成功する人と、ピンチにつぶれてしまう人。そのちがいは何かあるのでしょうか?要因のひとつとして「レジリエンス」があげられます。近年耳にすることが増えた「レジリエンス」とは一体どういうものでしょう?本記事では、誰もが持っている「レジリエンス」と「レジリエンスの育て方」についてご紹介していきます。レジリエンスとはレジリエンスとは、人生において逆境や困難にあったときにも、その状況に耐え、そこから回復する力のことです。「耐える」と言っても、どんな状況でも弱音を吐かず常に前向きでいるようなタフな心とはちがいます。「落ち込まない」のではなく、「落ち込んでも立ち直れるしなやかな心」のことです。人生の中で、失敗や、悲しい出来事、親しい人との別れなどさまざまなストレスに直面することがあります。渦中にいるときは、落ち込み、立ち直れないと思うことは人間として当たり前の反応です。一方で、そのような状況にあっても、人間は時間がたつにつれそこから回復していくことができます。「つらい」「悲しい」と思うできごとがあっても、気持ちを立て直すしなやかな力。人がもともと持っている心の回復力、抵抗力、再構築力こそがレジリエンスと言えます。しなやかに生きる力レジリエンスを鍛えることによって、ストレスに対応する力、成長につなげる力、行動する力、感謝する力、つながる力、感情をコントロールする力など多くの力が高まっていきます。それは、人が自分の生き方を選択できる力にもつながっています。日常のことだけでなく、自然災害やパンデミックといった予期せぬ出来事も人生のなかでは経験することがあるかもしれません。そのような逆境や困難に直面したときに、出来事は変えられません。しかし、出来事に対する捉え方や態度は自分で選択することができるのです。レジリエンスは生きていくうえでの「しなやかさ」。人生の舵を自分で握り、心地よく生きていくためにも大切にしたいものです。レジリエンスを育てる5つの方法レジリエンスは誰でも持っているものです。そして、育てることができます。方法はさまざまありますが、ここでは5つの方法をご紹介します。その1.感情のラベリングを習慣にするレジリエンスを育てるための土台として「自分の感情に気づく」ことが大切です。自分が今、どのような感情なのか意識したことはありますか。例えば、「怒り」の感情を持ったとき。自分の感情を観察してみると、心の奥には「さみしさ」や「不安」という感情が潜んでいることがあります。「怒り」という反応は氷山の一角。「怒り」の底にある感情に気づくことで、自分が本当はどうしたいのかが見えてきたり、言葉にすることで気持ちが安定することがあります。このように自分の感情に向き合い名前をつけることを「感情のラベリング」といいます。日々、感情のラベリングを意識してみることで、自分の気持ちをより理解できるようになります。感情のラベリングが習慣化できることにより、自己理解が高まることはもちろん、他者理解の力もあがり、人との良好なコミュニケーションにもつながります。その2. 自分自身と仲良くなる 自分自身を大切に思いやることで、不安や抑うつが減り、レジリエンスが高まることが分かっています。自分と仲良くなるためには、自分自身に関心を向けることが大切です。人と仲良くなりたいときにするのと同じように、自分に思いやりをもって接することです。そのための方法として、近年注目を集めているのが「セルフ・コンパッション」です。セルフコンパッションとは「自分自身(セルフ)を慈しみ、思いやること(コンパッション)」。方法としては、マインドフルネスや呼吸法の実践が有効です。自分の身体に「ありがとう」と優しくさわったり、抱きしめる方法もあります。お気に入りのボディクリームで全身をやさしくケアするのもいいでしょう。その3. 気晴らし力を育てる人間の感情のなかには、ポジティブな感情とともに、ネガティブな感情もあります。どちらも生きる上で必要なものです。ネガティブな経験や感情もレジリエンスが育つ上で宝になります。しかし、ネガティブ感情は持続しやすい特徴があり、ネガティブな感情のスパイラルに陥ったときは、気持ちをきりかえる気晴らし力が必要になります。気晴らしの方法としては、運動、音楽、ライティング、没頭できる活動がおすすめ。研究でも効果が証明されている方法です。運動:運動は不安や緊張の緩和、ストレス解消に役立ちます。朝のウォーキングは幸福感を高めてくれます。好きな曲で身体を動かしてみる、ストレッチするなど、楽しみながらできることを探してみるのもいいですね。音楽:聴く、歌う、楽器を演奏する。没頭できることなら何でも効果があります。好きな曲のプレイリストを作って、やる気のない時は、元気を出したい時にテーマソングを決めておくのもいいでしょう。ライティング:気持ちを紙に書き出すことで、すっきりしたり、広い視野で見ることができます。頭のなかのモヤモヤも整理される効果や、自分の感情が明確化される効果もあります。思考のデトックスにもなるのでおすすめです。没頭できる活動:集中して、あっという間に時間がすぎるような活動があると気持ちの切り替えとともに、パワーの充電になります。自分が夢中になれるものは何か?ちいさなことでいいのです。日々の「好き」にアンテナを立ててみて、見つけたらぜひ気晴らしリストに入れてみてくださいね。いつくかの気晴らしリストを持っていれば、落ち込んだ時などに立ち上がるパワーとなります。ぜひ、お気に入りを見つけてはいかがでしょうか。その4. 思考のワナに気づく出来事と感情の間には「思考」があります。同じ出来事でも、人によって感じ方はさまざま。それは「思考」がちがうからです。「レジリエンス・トレーニング入門 著 宇野カオリ」によると、誰もが陥りやすい、6つの思考のワナがあるそうです。1. 結論に飛びつくワナ何の根拠もないのに、自分で用意した結論に飛びついてしまう思考パターンに陥るワナ2. 「いつも、いつも」のワナわるいことが繰り返し起きて、それはずっと変えられないと信じ込んでしまうワナ3. 心を読むワナ自分が感じたことを、人の考えのようにとらえ、人を判断してしまうワナ4.「悪いこと」の拡大、誇張ワナ状況を悪い方、悪い方へと拡大解釈し、誇張していくワナ5. 「自分、自分」のワナ直面する問題の原因が、すべて自分自身にあると考えるワナ6. 「他(人・状況)、他」のワナすべての問題を、それに直面する他者や環境が原因であると考えるワナ思考のワナは普段、何気なく過ごしていると、なかなか気づかないものです。しかし、気を付けて思考を観察し、自分自身の思考のワナに気づくと、もしかしたら、今まで苦しんでいたことでもちがう見方ができるかもしれません。自分の思考のワナに気づいたら「~~と感じた。けれども~~。」と言い直してみましょう。ポイントとしては、別の見方でしてみたら、広い視野でみてみたら、他の人ならどう言うか?と自分に質問をしながら考えてみることです。出来事をどう捉えなおせばいいかと考えることで、レジリエンスが育っていきます。その5.自己効力感を育てる自己効力感とは「自分にはできる」という信念です。「どうせやってもできない」と考えるのではなく、「きっとできる力を私はもっている」という信念。自己効力が高まると、レジリエンスも育っていきます。自己効力感を育てるポイントは「成功体験」と「代理体験」が挙げられます。成功体験:実際に自分が行ってみて、うまく出来たという経験のこと。代理体験:性や年齢、健康状態や生活状況などにおいて、自分と似ていると思われる「モデル」となる人が、ある行動をうまく行っているのを見たり聞いたりすることで、”自分にもうまくできそうだ”と思うこと。(厚生労働省生活習慣病予防のための健康情報サイトより)「むずかしいな」と思うことに挑戦して上手くいき、自信になったことはありませんか?小さな目標達成を積み重ねることは、困難を乗り越えた経験に含まれます。それが人生の気づきとなり、「自分はきっとできる」という自己効力感につながるのです。また、自分と同じような「ロールモデル」に力をもらうことがあります。「あの人もがんばって達成したのだから、自分もきっとできる」と思うことで自己効力感を高めることにつながります。おわりにレジリエンスについてお届けしました。レジリエンスは別名「メンタル・マッスル(精神的筋力)」「レジリエンス・マッスル」とも言われます。「筋力」だから鍛えることができます。筋力を鍛えるには、5つの方法の他にも、自分の強みをみつけ活用することや、サポートし合える人間関係をつくることなどの方法があります。奥深いレジリエンスの世界。柳のようにゆれながら折れずにしなやかに生きていくために、レジリエンスを意識してみるのもいいかもしれないですね。