近年、従業員の健康面や就労モチベーションの向上に役立つとして注目されているものの1つに社員食堂があります。社員食堂の数は全体的に減少傾向にあるものの、福利厚生の充実や企業ブランディングの改善、健康増進を目的とした新しい社員食堂が登場しており、その姿はかつての「社食」のイメージとはかけ離れたものへと進化しています。また、有名企業や省庁などの社員食堂では一般公開もしており、地域住民の人々や観光スポットとしても人気が高まりつつあるようです。そこで今回は、現代人の食生活を振り返りながら、新しい社員食堂の魅力をお伝えします。健康的な食生活で、ウェルビーイングな毎日を目指しましょう!福利厚生とは?社員食堂の紹介の前に、福利厚生について簡単に解説します。福利厚生とは、企業が従業員とその家族に対して提供する、暮らしに役立つサービスです。福利厚生の充実は、従業員の労働意欲の向上や優秀な人材の確保にもつながるため、企業ごとにさまざまな取り組みが行われています。福利厚生には大きく分けて「法廷福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類あり、法定外福利厚生では、企業が独自で定めているのが特徴です。なかでも、従業員の健康管理に関する福利厚生が重要視されており、その1つの取り組みとして、社員食堂の充実が注目されています。社員食堂を充実させている企業が増えているではなぜ、企業側にとって社員食堂の充実が大切なのでしょうか?それにはさまざまな理由がありますが、大きな要因として「従業員は貴重な財産である」という考えに伴う、健康意識の高まりが挙げられるでしょう。外食やコンビニ食は効率的で便利ではありますが、栄養の偏りや塩分のとりすぎが社員の健康を損ない、結果的に貴重な人材を失うことにもつながりかねません。こうした理由から、カロリーや栄養バランスのある食事を提供する企業が増えており、社員の健康管理を目的とした社員食堂が徐々に増えています。また食事内容だけでなく食事環境を整えることで、従業員同士のコミュニケーションが活発になり、業務の効率化をはかる目的も含まれています。実は栄養不足の人が多い現代の日本は「飽食の時代」と言われ、食の欧米化などの影響により肥満率が高まっています。一方、食生活の乱れから、カロリー過多であるにもかかわらず栄養不足となる「新型栄養障害」が問題となっているのをご存じでしょうか。その大きな原因は、菓子パンや惣菜パン、即席麺といった炭水化物を主体としたタンパク質やミネラル不足によるものです。時間に追われる現代人の食生活は、手軽に摂取できる炭水化物中心の食事に偏りがち。しかしバランスの欠いた食生活を続けると、筋肉量の減少や免疫力の低下、むくみなどの症状のほか、場合によっては心疾患や糖尿病などの重要な疾病にもつながるため、日頃の食生活には十分な配慮が必要です。社員が喜ぶ社員食堂5選飽食の現代において、栄養不足が深刻な問題であることに驚かれた方もいらっしゃると思います。とくに働き盛りの世代においてその傾向は顕著であり、身体的・精神的な健康を維持する上で、食生活の改善は欠かせません。こうした状況をふまえ、さまざまな企業では、従業員の健康管理や仕業満足度を高めることを目的とした社員食堂の充実が見直されています。近年では、おしゃれなレストランやカフェのような社員食堂や健康的なメニューが登場し、健康面だけでなく、社員のモチベーションの維持にも繋がっているようです。また社員食堂には一般利用が可能な場所もあり、地域住民の人々の健康維持にも貢献しています。そこで以下では、社員が喜ぶ社員企業の代表例を5つ紹介しますので、参考にしてみてください。1.株式会社タニタ食堂1つ目は社員食堂ブームの火付け役である株式会社タニタ食堂の紹介です。こちらは健康器具メーカーTANITA(タニタ)が運営する食堂であり、丸の内店の他、提携店を含め全国8店舗を展開しています。栄養面に配慮したメニューが充実しているのはもちろん、店舗内にはカウンセリング・ルームが備えつけられており、管理栄養士から食生活アドバイスを受けられるのも魅力。また、お店で提供されるメニューには詳細な栄養成分表が示されているため、自宅で調理する際の参考にもなります。タニタ食堂HP2.オムロンヘルスケア株式会社タニタと並び、日本を代表するヘルスケア会社オムロン。オムロンでは「生活習慣病予防を推進する」というコンセプトのもと、塩分やカロリーを抑えた精進揚げセットや、時期ごとに提供されるイベント食が人気となっています。1日におよそ600人が利用する社員食堂は、社員からの要望に応える形で、1人でも利用できるカウンター席も用意。健康面と仕事のモチベーション維持に配慮された設計により、社員からも好評とのこと。ヘルスケア会社であることから、ヘルシーなメニューばかりを想像しますが、若手社員のために「ガッツリ系」メニューも用意されています。「日経ニューオフィス賞」を受賞した環境にやさしいオフィスも魅力です。オムロン ヘルスケア 社食ドットコム3.農林水産省(各省庁)省庁内の社員食堂を一般利用できるのをご存じでしょうか?今回紹介するのは、食を司る重要省庁である農林水産省。中央合同庁舎1号間に位置する同省の社員食堂は、入館証がなくても一般利用が可能です。「おむすび権米衛」や「手しごとや 咲くら」などの和食が楽しめます。品数豊富な小鉢には、ご飯や麦飯、お味噌汁がトッピングでき、自分好みの定食が選べます。また、農林水産省ならではの試みとして、すべてのメニューに「食糧自給率」が記されているのも特徴です。そのため、食事を楽しむだけでなく、食について学ぶために親子連れで訪れてみるのも良いかもしれません。同省以外にも、一般公開されている食堂がありますので、以下のホームページを参考に、省庁をめぐってみてはいかがでしょうか。官庁訪問期間中に利用できる食堂一覧4.スクウェア・エニックススクウェア・エニックスは「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」などの日本を代表するゲームを手がけるゲーム・メーカーです。読者の方の中にもプレイしたことがある方も多いのではないでしょうか。最近ではスマートフォン向けゲームも多数発表し、好評を博しています。同社では2012年に現在の東新宿オフィスに移転以降、「社員と社員をつなぐコミュニケーションの場」として社員食堂「Lounge」がオープンしました。食堂入り口には、スクウェア・エニックスを代表するキャラクターたちのフィギュアが配置され、従業員のモチベーションアップに一役かっています。また、ミーティングやアイディア出しがしやすい座席設計も特徴で、自由で開放的な空間が新しい作品を生み出す原動力となっているようです。SQUARE ENIX オフィス紹介(東京)5.ヤフー株式会社ラストはIT業界からの紹介です。1996年4月1日からサービスが始まったYAHOO!JAPAN。設立20周年を迎えた2016年に現在の東京ガーデンテラス紀尾井町へ移転し、新たな社員食堂の運営が始まりました。エントランスはIT企業らしくディスプレイが並ぶおしゃれな空間。座席数はおよそ800席あり、1日の利用者数は2500食を超えるそうです。レストラン「BASE」とカフェ「CAMP」の愛称には「多くの情報が集まるコミュニケーションの場」という意味が込められています。メニューにはランチプレートの他、焼きたてのパンが提供されるなど、社員のウェルビーイングな働き方に徹底的にこだわっています。13時以降であれば一般の方も利用できるので、お近くに寄られた際にはぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか(ただし、ヤフー社員と一緒であることが条件)。YAHOO!JAPAN HPウェルビーイングを意識した食生活を送ろう食生活を充実させることは、ウェルビーイングの質の向上にとってもっとも大切な要因です。人間の身体は食べるものからできており、日々の活力や満足度は食事によって左右されるといっても過言ではないでしょう。今回取り上げた5つの企業以外にも、さまざまな企業が独自のアイディアで社員食堂を展開しています。ウェルビーイングの向上や健康のために、「新しい楽しみ」として社員食堂を回るのも面白いかもしれません。参考資料厚生労働省令和元年「国民健康・栄養調査結果の概要」p18、19農林水産省令和2年度「我が国の食生活の現状と食育推進について」公立学校共済組合豊橋ハートセンター厚生労働省e-ヘルスネット 今日の健康問題・食料問題に対応し、食生活の方向を示す「食生活指針」