リモートワークやハイブリッド・ワークなどの働き方改革が加速する現代。社会環境の変化とともに、子育てのあり方も変わりつつあります。なかでも近年、とくに注目を集めているのが、男性の育児休暇取得の推進です。女性が社会進出を進めるなか、さらなるワーク・ライフ・バランスの安定が求められており、政府は男性の育休取得推進を目指す、新しい方針を発表しました※1。そこで本記事では、出生時育児休業制度(通称「産後パパ育休」)について解説します。パパ育休を取得するメリットや現状についても紹介していますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。産後パパ育休とは?近年、政府が推奨する「産後パパ育休」という制度をご存じでしょうか。産後パパ育休とは、子供が生まれた日から8週間以内に、最大で4週間の育休を取れる制度のことです。これまでの「育児・介護休業法」が改訂されたことで、2022年10月、女性の「産休」にあたる「産後パパ育休」が新設されました。また、従来の育児休業では原則として1度しか取得できませんでしたが、法改正に伴い※2、男女とも2回まで取得可能です。産後パパ育休は「育児休業とは別に」取得できるため、積極的に活用してワーク・ライフ・バランスの向上に務めましょう。日本政府は2025年までに、男性の育休取得率を50%までの拡大を掲げており※3、今後ますます産後パパ育休を実施する企業が増えることが見込まれます。産後パパ育休を取得するメリット従来の育児休暇と比較した産後パパ育休のメリットは、男性がこれまでよりも気軽に育児休業を取得できる点にあります。男性への育児休暇が推奨される一方、依然としてその取得率が低いのが現状です。そのため、制度を柔軟にすることで男性の育児参加をうながし、女性の社会復帰や就業機会の広がりが期待されます。産後パパ育休の申請方法産後パパ育休の取得には条件がありますので、申請の際には以下の条件を確認してください。対象期間/取得可能日数・・・子供の出生後8週間以内に4週間まで取得できる申出期限・・・原則として休業の2週間前まで(場合によっては1か月前まで申請できる)分割取得・・・2回に分割して取得可能。ただし、申請初めにまとめて申し出る必要あり休業中の就業・・・労働者の合意した範囲内であれば、休業中でも働ける以上を踏まえ、事業所の人事担当者に所定の書類を申請することで、産後パパ育休が申請できます。育休取得の現状制度改革が進められる一方で、日本人男性の取得率の低さが問題となっています。厚生労働省が実施した、「令和5年度男性の育児休業取得率の公表状況調査」によると、従業員1000人以上の事業所のうち、男性の育休取得率は46.2%、育休等平均取得日数が46.5日という結果となりました※4。全体として昨年度(令和4年)は17.13%と過去最高を記録したものの、まだまだ育休取得には高いハードルが認められるのが現状です。また、6歳未満の子供を持つ日本人男性の家事・育児への参加時間は、平均1時間程度と国際的基準と比べても、低水準であることも大きな課題と言えるでしょう※5。日本は世界一の育休制度?日本人男性の育休取得率が求められるなか、日本が先進国における育休・保育制度に関する評価ランキングで第1位を獲得したのをご存じでしょうか。これは2021年6月にユニセフが発表した報告書に記載されており、福祉国家のスウェーデンやノルウェーを大きく引き離した結果となりました※6・7日本の制度についてユニセフは「父親に6か月以上の有給育児休業期間を設けた制度を整備している唯一の国」と紹介し、その制度について大きな評価をつけています。そのため今後の日本の課題としては、制度の有効活用の活発化が求められます。また、女性の育児休業制度において日本は16位となり、今後さらなる改善が必要となるでしょう。育休を取りやすい環境づくりが求められている男性の育休制度について、日本では十分な対策がとられていることがわかりました。しかし制度だけでは育休取得の拡大は望めません。制度とともに大切なのは、育休を取りやすい環境づくりです。徐々に男性の育休取得が増えてはいるものの、理解が行き届いていない現状があります。近年では、育休を取得した男性社員に対する、事業者側からの不当な扱い「パタニティ(父性)・ハラスメント(通称パタハラ)」が頻発しています。読者の方にとっては、あまり聞きなれない言葉かもしれません。しかし、厚生労働省が2020年に実施した職場ハラスメントに関する実態調査によれば、過去5年間で育児休暇および時短勤務を申請した男性の4人に1人が、パタハラの被害にあっているという報告がなされました※8。その他、事業内における「業務の属人化」の改善も、課題の1つとして挙げられます。育休の成功事例3選産後パパ育休制度や日本における育休制度の現状を紹介してきました。政府によるさまざまな取り組みが行われるなか、今後は事業者だけではなく、社会全体として意識の変化が必要です。とはいえ、育休制度を十分に活用し、大きな成果をあげている企業も少なくありません。そこで以下では、厚生労働省が主催する「イクメンプロジェクト※9」において、イクメン企業アワードを受賞した3つの企業を紹介します。大和リース株式会社1社目は2018年に「理解促進部門」でグランプリを獲得した大和リース株式会社です。大和ハウス工業株式会社の子会社である大和リース株式会社は、子供が生まれた職員に対して一時金を支給する、「エンジェル奨励金」制度を2015年度から導入しています。同社は男性の育児休暇取得を積極的に推進しており、「仕事」と「育児」の両立支援の充実に取り組んでいます。この制度により、同社におけるワーク・ライフ・バランスは飛躍的に向上し、生産性や創造性の向上にもつながっているそうです。また申請時には、家庭内における女性の負担軽減を目的とした「家事・育児シェアシート」の提出を義務付けているのも特徴です。大和リース株式会社New Releaseコーソルコーソルは、BtoB事業に特化したITt企業です。コーソルは、2019年にアフラック生命保険株式会社とともに「両立支援部門」でグランプリを受賞しています。コーソルが男性の育児休暇取得に取り組み始めたのは2014年からのこと。その後2015年に男性の育休取得が大きく広がり、2021年には男性の育休取得率が100%を達成しました。また、2014〜2021年にかけての男性社員の平均育休日数は58日となり、ライフ・ワーク・バランスに大きく貢献しています。育休時の人員の補充についてもきちんとケアされており、フォローにまわった社員は人事評価でプラスに反映されるそうです。コーソルは行動指針として「協力しあうこと」を掲げ、日頃から助け合いの社風が育まれています。株式会社コーソル株式会社技研製作所最後に紹介するのは、2020年にグランプリとなった株式会社技研製作所です。育休取得率100%、平均取得期間3か月以上を目指している同社では、社員がいきいきと働ける環境づくりをモットーとしています。そして2019年9月から、独自の「育児休業支援金」を創設。2022年度には、男性の育休取得率および女性の育休からの復職率100%を達成しています。さらに2023年7月から制度内容を見直し、3か月以上の育休取得者を対象に、最大月5万円を最長12か月支給する制度に取り組んでいます。株式会社技研製作所産後パパ育休を積極的に活用しよう労働環境が急速に変化する現代。ワーク・ライフ・バランスの充実が求められています。日本では十分な制度設計がなされているため、これを利用しない理由はありません。「そうは言ってもウチの会社じゃなかなか・・・」と思われている人も現状では多いはずです。しかし、たった1人の意識の変化が、周りの多くの人に影響することもあります。充実した毎日を送るためにも、まずは産後パパ育休について知り、そして活用してください。制度を上手に生かして、家庭や仕事でのウェルビーイングの向上を目指してみませんか?★MiCORAYピックアップ★・日本生命・古河機械金属・アサヒグループホールディングス・積水ハウス・ミズノ参考資料※1 厚生労働省 育児・介護休業改正のポイント※2 厚生労働省 育児・介護休業法 改正ポイントのご案内※3 NHK首都圏ナビ※4 厚生労働省「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」(速報値)※5 厚生労働省 育児・介護休業法の改正について※6 COSMOPOLITAN 男性の取得率が高い国は?海外の「育児休業制度」とその背景※7 ユニセフ Are the world’s richest countries family friendly?(英語版)※8 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書p140※9 厚生労働省 イクメンプロジェクト イクメン推進企業・イクボスアワード受賞者