リモートワークの普及が加速し、私たちの働き方と生活様式には根本的な変化が生じています。オフィスからの解放感、柔軟性の向上、そして通勤ストレスの軽減など、リモートワークの利点は多くの人々にとって魅力的です。しかし一方で、孤立感やコミュニケーションの不足、ワークライフバランスの崩壊など、新たな課題も浮かび上がっています。このコラムでは、リモートワークが私たちの心に及ぼす変化に焦点を当て、その影響を深堀りします。さらに、リモートワークによるメリット・デメリットも解説していますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。リモートワークとは?コロナ禍の影響により、急速な広まりを見せたリモートワーク。通勤によるストレスや職場内での人間関係から解放されるなど、恩恵を受けた方も多いのではないでしょうか。一般にリモートワークとは、情報通信技術を利用した、時間や場所を選ばない働き方を意味します。似た言葉に「テレワーク」がありますが、どちらも意味はほぼ同じで、テレワークのテレ(tele)とは「遠い場所・遠方の」という意味です。リモートワークへの流れでは、リモートワークはいつ頃から始まったのでしょうか。日本では、働き方改革及びコロナ禍の影響により、近年広まりを見せましたが、その始まりは1970年代のアメリカまで遡ります。日本においては1990年代にリモートワークが注目を集めたものの、経済状況の悪化により浸透しなかったそうです。内閣府のデータによると、コロナ禍前の日本における普及率は、2019年12月の段階で10.3%でしたが、2022年のピーク時で32.2%まで上昇しています※1。リモートワークの種類徐々に日本でも普及しているリモートワークですが、リモートワークにも大きく分けて3つの種類があるのをご存じでしょうか※2。以下ではその特徴について解説します。・在宅勤務文字通り、自宅を勤務地とする働き方です。通勤や外出によるストレスから解放されるため、時間を有効に活用できることが特徴です。また、お子さんのいる家庭では、夫も積極的に家事や育児に参加できるメリットがあります。完全在宅勤務を実施する企業もあれば、午前中のみの出社など、企業ごとに導入方法はさまざまです。・モバイルワーク公共交通機関や飛行機、あるいは移動先やカフェなどを勤務地とする働き方です。自由に業務場所を選べることから、業務の効率化や、生産性の向上にもつながります。営業職など、日常の業務をオフィス以外の外出先で行う場合に有効です。また、モバイルワークに必要なWi-Fiやノート・パソコン、タブレットなどは企業から支給される場合が多く、場所を選ばない自由な働き方を希望する方に向いています。・サテライトワークサテライトワークとは、企業の拠点から離れたオフィスで勤務するリモートワークです。その他に、コワーキング・スペースで業務する場合もサテライトワークに含まれます。在宅勤務と同様、通勤ストレスが軽減されるため、従業員の生産性や時間の効率性が高まるのが特徴です。職種によっては地方にオフィスを設置している企業もあり、労働環境の改善にも効果を発揮します。リモートワークの現在コロナ禍が収束しつつある現在、どの程度の企業がリモートワークを導入しているのでしょうか。厚生労働省及び総務省のデータによると、全体の51.9%が何らかの形でリモートワークを導入しており、5.5%の企業が今後リモートワークを導入予定と回答しています※3。しかしリモートワークの実施率には地域差があり、もっとも実施率が高いのは東京都23区で55.2%。それに対し地方では実施率が低い地域もあり、ピーク時でも23.5%と、東京都の半分以下の実施率であることも報告されています※4。また、新型コロナウイルスがインフルエンザと同じ5類に分類された影響から、従来の働き方に戻っている企業も少なくないようです※5。リモートワークによる心の変化ここまでリモートワークについて解説してきました。リモートワークについては、賛成の声が多い中、心理的にネガティブな影響を及ぼす場合もあるようです。そこで以下では、リモートワークによるメリット・デメリットを紹介します。●メリットリモートワークには、労働環境や生活習慣の改善など、さまざまなメリットがあります。その中から、今回は心理的なメリットに焦点を当てて解説します。1.時間の効率性が上がる通勤時間の短縮や移動によるストレスがなくなることから、心に余裕が生まれることがリモートワークのメリットです。たとえ短い時間でも、毎朝の通勤ラッシュは心理的に強いストレスがかかるもの。自動車通勤でも、渋滞に巻き込まれイライラした経験がある方も少なくないでしょう。リモートワークの普及により、通勤ストレスから解放されたことは、生産性や効率性の面で大きな変化をもたらしました。2.居心地の良い労働環境を作れるリモートワークでは、働きやすい環境を自分で整えられます。作業効率を上げるため、カフェで美味しいコーヒーを飲みながら業務するのも良し、お気に入りの音楽を聴きながら自宅でじっくり作業するのも自由です。また、自由度の高い職種では、旅先や移動先などでも仕事が可能なため、リラックスして楽しみながら仕事ができます。3.家族とのコミュニケーションが増える家族とのコミュニケーションが増えるのも、リモートワークの大きなメリットと言えるでしょう。家族と過ごす時間が増えれば、自然にコミュニケーションの機会も増えるため、家族との絆が深まります。また、男性が積極的に家事・育児に参加することで、女性の負担が軽減されることが期待できるのもリモートワークの良い点でしょう。●デメリットリモートワークには多くのメリットがありますが、一方でデメリットを感じている人も少なくありません。以下ではリモートワークによる代表的なデメリットを紹介します。1.コミュニケーションが減り、孤独感を感じやすい出社する頻度が減ったことでストレスが低減される一方、孤独を感じる人も多いようです。ウェブ会議等で顔を合わせるものの、直接的なコミュニケーションではないため、「人の温かさ」が希薄になり、なかなか信頼関係も築けません。人間は社会的動物であることから、メンタルにとっては、直接的なコミュニケーションも重要です。2.運動不足による生活習慣の乱れ在宅勤務が続く問題として、運動不足が挙げられます。リモートワークの中でも在宅勤務の場合は、外出や体を動かす機会が減るため、とくに注意が必要です。運動不足は生活習慣の乱れに直結します。たとえ在宅勤務であっても、朝日を浴びたり、軽いウォーキングをしたりなど、健康面を意識することを心がけましょう。生活習慣の乱れが続くと、自律神経も乱れ、生活の質が低下する恐れもあります。3.リモートワークうつに注意リモートワークが広まる中、孤独感からリモートワークによって「うつ病」を発症するケースが増えているようです。これは「テレワークうつ」や「リモートワークうつ」と呼ばれ、近年増加傾向にあると言われています。「リモートワークうつ」の主な原因は、・コミュニケーション不足・生活リズムの乱れ・孤独感などが挙げられており、リモートワークを実施する企業や従業員に注意が呼びかけられています※6。もし気になる症状がある場合は、無理をせず、早めに周囲や専門機関に相談するよう心がけてください。リモートワークを活用してウェルビーイングを上げようリモートワークの普及は、働き方の改善だけでなく、心身にも大きな影響を与えています。メリットが多いのは良いことですが、デメリットがあることも事実です。メリット・デメリットをきちんと理解した上で、リモートワークを有効に活用することが望ましいですね。これからますます多様な働き方が広まることは間違いありません。ご自身のライフ・ワーク・バランスと相談しながら、ウェルビーイングをアップさせる働き方を選んでみてはいかがでしょうか。★MiCORAYピックアップ★・大塚商会・The OWNER・日立ソリューションズ・株式会社リアルゲート・さくマガ・プラス株式会社ファニチャーカンパニー参考資料一般社団法人日本テレワーク協会厚生労働省 働く人のウェルビーイングと健康確保に向けて※1・3・4内閣府 第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査※2厚生労働省 テレワークとは※5総務省 第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済※6厚生労働省 ・テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン