健康は私たちにとって、なによりも大切な宝物。その宝を守り育てるのが「福利厚生」の役割です。仕事中心の日々が続くとつい健康をおろそかにしがちですが、定期的な健康チェックや心身のケア、柔軟な働き方の提供に留意した福利厚生は、従業員の生産性アップやモチベーションの向上にもつながります。また近年では、従業員の健康を意識した「健康経営」に取り組む企業も増えているようです。本記事では、健康経営について簡単に解説しながら、従業員の健康に配慮したユニークな福利厚生を5つ紹介します。どの企業も独自のアイディア満載ですので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。福利厚生についてこれまで本コラムではさまざまな企業の福利厚生を紹介してきました。しかし本記事で初めてMiCORAYコラムに触れる方もおられると思います。そこで改めて福利厚生について簡単に解説します。福利厚生とは、賃金や賞与といった基本的な報酬の他に、従業員やその家族をサポートする報酬のことです。主な福利厚生として、健康保険、介護保険、労災保険などがあり、従業員が安心して業務に集中できる環境作りに役立っています。福利厚生の充実は従業員の生産性の向上やモチベーションアップにもつながるため、各企業でアイディアを出しながら優秀な人材の確保に取り組んでいます。福利厚生は国によって定められた法定福利厚生と、企業独自で決める法定外福利厚生の2つに分けられており、とくに法定外福利厚生では、企業のアピールポイントとしてさまざまな施策が取られているのが特徴です。健康経営に取り組む企業が増えているユニークな福利厚生が多くあるなか、近年、企業による「健康経営」の取り組みが増加しています。健康経営とは、企業が従業員の健康管理を積極的に行う「健康への投資」です。経営的な観点から健康を捉えることで従業員の健康を増進し、生産性の向上や人手不足の解消などに効果を発揮しています。健康経営が広まったことで、これまで「自己責任」とされてきた健康に注目する経営者が増えつつあり、これからの企業のあり方にとって重要な施策になることが予想されます。さらに健康経営の導入は、労働災害の減少や医療費の削減にもつながるため、今後ますます広がりを見せていくことでしょう。国も力を入れている健康経営こうした健康経営の動きは国によっても勧められています。経済産業省は、2014年度から上場企業500社を対象とした「健康経営銘柄」の選定を開始し、2016年度には「健康経営有料法人認定制度」も設けられました。また、法人大企業の上位に「ホワイト500」、法人中小企業には「ブライト500」が付けられ、2022年度の申請数は過去最高の1万7000社に達しています。健康経営の意識が高い企業ほど離職率が低いというデータが出ており、今後さらに申請数が増えることが予想されます※。※経済産業省|ヘルスケア産業課|健康経営の推進について|令和4年6月.p12健康経営のメリット4つ徐々に広がりを見せる健康経営。そのメリットは多岐にわたりますが、今回はその中から4つのメリットを見てみましょう。1.企業のイメージアップ上述したように、健康経営に取り組む企業では離職率が低い傾向にあります。離職率の低さは企業のイメージアップにもつながるため、社内外にポジティブな印象を与えられるでしょう。どの業界でも人手不足が叫ばれるなか、優秀な人材の確保は緊急の課題です。2.モチベーションや生産性が上がる健康経営は従業員の健康への投資です。従業員の心身の健康度が高まれば、ストレスが軽減されモチベーションのアップにつながります。また業務もスムーズになり、仕事に対する態度も積極的になり、生産性の向上も期待できます。3.医療費の削減にも人手不足の解消や労働人口の確保と並び、健康経営で重要とされるのが医療費の問題です。少子高齢化の問題を抱える日本では、従業員の高齢化に伴う医療費の増加が深刻な社会問題となっています。健康経営を実施することで、企業が負担する健康保険の使用回数が削減され、医療費の大幅な減少の実現が可能です。4.離職率の低下従業員の心身が健全に保たれていれば、離職率の低下も回避できるでしょう。en人事のミカタが2022年に行った調査※によれば、退職の理由ダントツ1位に「人間関係の悪さ」が挙げられています。健康経営が広まれば職場環境が改善され、ストレスが軽減されることから、離職率の低下が予想されます。※en人事のミカタ|退職理由のホンネと建前【2022年版】従業員の健康に配慮したユニークな福利厚生5選ここまで福利厚生と企業における健康経営の広がりについて解説しました。多くの企業が健康経営を取り組み始めるなか、健康を意識した福利厚生にも注目が集まっています。そこで以下では、健康に配慮したユニークな福利厚生を実施する企業を5つ紹介します。1.株式会社はてな1つ目は株式会社はてなです。MiCORAY読者の方の中にも「はてなブログ」や「はてなブックマーク」を利用したことがある方もいらっしゃると思います。「知る」「つながる」「表現する」の3つのミッションを掲げる株式会社はてなは、プラットフォームやマーケティング、テクノロジーソリューションを提供するIT企業です。同社では従業員の労働環境の整備を重視しており、フレキシブルワークスタイル制度を策定しています。京都(本社)と東京の2拠点にオフィスを構えているものの、居住地は全国が対象となっており、従業員のおよそ9割が在宅勤務を選択しているとのこと。そんな株式会社はてなが実施する福利厚生が、健康促進を目的とした「自転車通勤支援」です。はてなでは、通勤に自転車を使用する従業員に対して一律月2万円の手当が出され、従業員の健康をサポートしています。夏の暑い日に汗をかいて通勤した際には、ミストサウナや乾燥機付きのシャワー室も利用できるなど至れり尽くせりです。株式会社はてなhttps://hatena.co.jp/2.株式会社ヤプリ株式会社ヤプリは、だれでも簡単操作でアプリ開発ができる「Yappli」を提供するIT企業です。CMでも紹介されているため、ご存知の方も多いと思います。複雑なプログラミングを使わない、いわゆる「ノーコード」を用いた同アプリは爆発的な支持を獲得し、すでに650社以上の企業に導入される大ヒットとなりました。株式会社ヤプリでは、結婚休暇や結婚祝い金といった福利厚生のほか、従業員が安心して働ける環境作りを目指す働き方支援制度「lily制度」を導入しています。妊活や不妊治療の支援等を目的とした同制度では、1人の従業員につき最大50万円までを会社が負担し、希望者のためのオンライン相談窓口も設置しています。株式会社ヤプリhttps://yappli.co.jp/3.株式会社イーウェル「あったらいいな」から「なくてはならない」存在を目指す株式会社イーウェルは、企業のウェルビーイングの向上や従業員の健康管理、ウェブアプリサービスの開発など、さまざまなビジネスを展開する企業です。福利厚生制度構築支援サービスや健康経営推進支援サービスも手がける同社は、まさに今後の健康経営の要になる企業といっても過言ではないでしょう。従業員の健康促進を目的とした「ウォーキングキャンペーン」では、上位5位までのチームに最大5万円分のクオカードが支給される福利厚生が実施され、好評を博しました。株式会社イーウェルhttps://www.ewel.co.jp/4.コネクシオ株式会社コネクシオ株式会社は、携帯電話の卸売・販売や保険ショップ「ほけんの窓口」を手がける会社です。コンシューマー事業と法人事業の2つの事業を展開する同企業は、2020年にハタラクエール優良福利厚生法人に認定されています。また不要デバイスの回収やペーパーレスに関する取り組みといった、環境問題への積極的な取り組みでも注目を集めました。同社は健康に関する福利厚生として、2019年から禁煙サポートプログラムを実施。オンライン診療での初期費用の半額補助や、禁煙セラピー本の無料配布などに取り組み効果を発揮しています。コネクシオ株式会社https://www.conexio.co.jp/5.株式会社ゆめみインターネット事業に特化した事業を展開する株式会社ゆめみ。同社はインターネットにおけるアプリ開発や制作、コンサルティング業からデジタルマーケティングなど幅広い分野で高い評価を獲得しているIT企業です。株式会社ゆめみがデザイン支援したau PAYアプリは、2023年度の「グッドデザイン賞」を受賞しています。株式会社ゆめみでは、副業や各種給付金といった福利厚生だけでなく、運動チャレンジ制度やタンパク質取り放題制度、野菜支給制度といったユニークな施策が特徴です。とくに2008年から開始された野菜支給制度では、月に1度希望者全員に無農薬野菜が配布されており、従業員の「食」の分野からの健康にこだわっています。コロナの影響により一時中断されたものの、好評により2023年度に再開されました。株式会社ゆめみhttps://www.yumemi.co.jp/category/companyかけがえのない健康を大切に!福利厚生シリーズ【健康編】を解説しました。仕事や家事、そして育児において何よりも大切なものが健康です。健康でいられるからこそ、ウェルビーイングが高められ、充実した毎日を送れるといっても間違いありません。昨今では、従業員のウェルビーイング向上のため、企業ごとにさまざまな福利厚生が設置されています。就職や転職を目指している方は、ぜひ健康に配慮した福利厚生にも注目して、企業選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。▶関連記事こんな福利厚生がある企業で働いてみたい!面白い福利厚生がある企業7選【働き方編】参考HP経済産業省|ヘルスケア産業課|健康経営の推進について|令和4年6月経済産業省|健康経営銘柄東京商工会議所|健康経営とは