多様性が広がり、働き方が大きく変わりつつある現代社会。障害を抱えながらも社会で活躍する人々が増えています。しかしその一方で、「障害を抱えながら社会に出るのは難しい」「どのような雇用形態があるのだろう・・・」「そもそも自分は就職できるのだろうか」といったことでお悩みの方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、障害者雇用についてや一般雇用との違い、就職支援を得られる窓口などについてわかりやすく解説します。これから就労を考えている方にとって、きっと役にたつと思いますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。そもそも障害者雇用とは?障害者雇用枠があることをご存知ない方のために、まずは障害者雇用について解説します。障害者雇用とは、事業者(企業)や自治体が「障害者雇用枠」を設け、障害のある方を積極的に採用する制度のことです。というのも、障害を抱える方が就労を希望する際、一般雇用と比べてどうしても不利になる場面が出てきてしまいます。そのため、日本では1960年に「障害者雇用促進法」が制定され、就労機会の均等性をはかる目的で「障害者雇用枠」が設置されました。障害者雇用率についてまた一定規模以上の事業者(企業)や自治体には、「障害者雇用率制度」が適応され、障害のある方を雇用するよう義務付けられています※1。令和5年度現在の障害者雇用率は以下の通りです。・民間企業・・・2.3%・国や地方公共団体・・・3.0%・都道府県の教育委員会・・・2.9%障害者雇用率は今後も増加傾向にある障害者雇用率は令和6年から2.5%となり、令和8年には2.7%まで引き上げられることが発表されました※2。そのため、障害を抱える方の社会進出は、今後ますます活発になることが予想されます。障害者雇用と一般雇用の働き方の違い障害を抱える方が就労を目指す際に気になるのが、障害者雇用と一般雇用の違いではないでしょうか。そこで次に、2つの雇用形態の違いについて見てみましょう。障害者雇用とは障害者雇用とは、誰でも応募できるものではなく、「障害者手帳」を持っている方が対象となる雇用形態です。というのも一口に障害といっても、身体的なものや精神的なものまで、原因や症状はいろいろあります。そのため、それぞれの方の現状を正確に判断するためにも、障害者手帳の保持は必須です。また、障害者手帳があることにより、雇用者側も障害に配慮しやすいという大切なメリットがあります。一般雇用とは一方で、一般雇用は障害者手帳の有無にかかわらず応募できる雇用形態です。企業が求める条件を満たせば、誰でも応募できます。例)満〇〇歳未満、〇〇の経験3年以上など。障害を抱える方でも一般雇用として応募でき、多くの人が社会で活躍しています。障害者雇用として採用されるには障害者手帳が必要。また、障害者手帳には3種類あり、障害者雇用として応募するには、下記のいずれかの障害者手帳が必要となります。就労をご検討中の方で、まだお持ちでない方は、ご自身に該当する障害者手帳を申請してください。身体障害者手帳視覚障害や聴覚障害など、身体に何らかの障害がある方に交付される手帳です。全国の都道府県知事により交付されます。療育手帳療育手帳とは、知的機能や社会生活能力などを総合的に判断し、知的障害と判断された方に交付される手帳です。こちらも全国の都道府県知事により交付されます。精神障害者保健福祉手帳障害者手帳交付の対象となるのは、従来は身体障害・知的障害の方に限られていました。しかし2018年より、うつ病やてんかん、パニック障害などの精神疾患を抱える方も対象に加えられたため、障害者手帳を受け取ることができます※3。障害者雇用として働くメリットやデメリットについてでは、障害者雇用として働くメリットにはどのようなことが考えられるのでしょうか。障害の種類や程度により何をメリット・デメリットとするかは人により異なりますが、ここではよく言われる内容を紹介します。障害者雇用のメリット障害者雇用のメリットとして、次のものがあげられます。・実務経験や技能(スキル)を問わないものがある・実務内容を就労前に体験できる場合がある・企業が積極的に障害者を採用している場合、人材に合わせた環境づくりをしている・障害を持つ方に対しての理解が深く、働き方を調整してくれる(通勤時間の変更など)他にも多くのメリットがありますが、全体に共通して言えるのは「障害を抱える方への理解」があげられます。また、障害者雇用に関するインターネット・アンケートでは、次の結果が報告されています。有効回答者180名のうち、「障害を開示しているので、安心して働くことができた」が67名、「一般枠ではエントリーが難しかった企業に就職できた」が51名、「未経験の業界や職種に就職できた」が23名と、障害者雇用についてポジティブな結果となりました※4。障害者雇用のデメリット多くのメリットが報告される一方で、デメリットもあるようです。デメリットとしては次のものがあげられます。・障害者手帳が必須(申請から交付まで1〜2ヶ月かかる)・障害者手帳の交付のタイミングによっては、希望する求人に間に合わないこともある・どうしても一般雇用に比べて求人が少ないこのことから、障害者手帳の取得がひとつの壁であると考えられます。しかし近年、マイナンバーカードと障害者手帳の一体化が進んでいるため、これらの問題は解決されることが予想されます※5。障害者雇用の求人情報はどこで探せば良い?ここまで障害者雇用について解説してきました。しかし就労を考えている方のなかには、どこに相談したら良いのか、お悩みの方もいるかもしれません。厚生労働省のホームページでは「障害者の方への施策」として、以下の窓口が紹介されていますので、ぜひ積極的に検索してみてください※6。全国のハローワーク全国に設置されているハローワークでは、一般雇用求人と同様に、障害者雇用にも積極的に取り組んでいます。専門職員や職業相談員による職業相談や紹介なども行っているため、就労に不安がある方でも安心して相談できます。また、ハロートレーニングと呼ばれる障害者訓練も実施していますので、積極的に活用することをおすすめします※7地域障害者職業センターとチャレンジホームオフィス※8専門的なリハビリテーションを受けられる施設もありますので、ぜひ利用してみましょう。各地の地域障害者職業センターで受けられる支援はおもに以下の2つです。・職業能力開発支援・障害を抱える方の雇用支援さらに、在宅ワークを希望する方には、厚生労働大臣に申請・登録を受けている団体によるチャレンジホームオフィスがありますので、お近くの団体に問い合わせてみてください。障害者就業・生活支援センター※9この他にも、全国には障害を抱える方に向けた就業・生活支援センターが設けられています。雇用や保険、福祉などとも連携していますので、就労や生活に不安がある方は一度相談してみてはいかがでしょうか。難病相談支援センター※10難病に苦しむ方のための支援センターもあります。難病相談支援センターでは、生活上の悩み相談以外にも、患者の交流促進や就労支援なども行っていますので、ご自身の状況に少しでも不安のある方はぜひ相談を。電話相談にも対応していますので、外に出るのが困難な方でも安心して利用できます。自分の適性を見極めつつ、あせらずにゆっくりと探すことが大事今回は障害雇用について解説しました。障害を抱える方には、「その人にしかわからない」苦しさがあります。しかし、少しでも社会と関わり合いながら、明るく前向きな毎日を送りたいと思っている方も多いはずです。周りと比べる必要はありませんし、無理することもありません。多くの支援を活用しながら、あせらず、ゆっくり、ご自身に合ったお仕事を見つけてみてください。そのために、本記事が少しでも皆さんのお役にたてれば幸いです。参考文献※1・2 厚生労働省 令和5年からの障害者雇用率の設定等について※3 厚生労働省 障害者雇用義務に精神障害者が加わりました※4 DIーAGENTの【アンケート調査】有効回答数180名「障害者雇用枠」の理想とギャップ~「こんなはずじゃなかった!」を防ぐ就職・転職方法は?~※5 厚生労働省 障害者手帳に関するマイナンバー制度の情報連携について※6 厚生労働省 障害者の方への施策※7 厚生労働省 ハロートレーニング(障害者訓練)※8 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 地域障害者職業センター 障害者の在宅就業支援ホームページ チャレンジホームオフィス※9 厚生労働省 令和4年度障害者就業・生活支援センター一覧※10 公益財団法人難病医学研究財団 難病支援センターその他の参考HP政府広報オンライン働きたい障害者の方も 障害者を雇用したい事業主の方も ご利用ください 障害者雇用の支援メニューLITALICOワークス 障害者雇用で働くとは?障害者雇用と一般雇用の違いやメリット、デメリットはあるのかを解説atGP 【障害者雇用の基礎知識】一般雇用との違いやメリット・デメリット、制度を解説