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クォーターライフクライシスとは?|2つの型と乗り越え方

クォーターライフクライシスとは?|2つの型と乗り越え方

仕事も生活も、大きな問題があるわけではない。

それなのに、ふとした瞬間に「このままでいいのかな?」という不安がわいてくる。20代後半から30代にかけて、こうした気持ちを抱える人は少なくありません。

その不安は、「クォーターライフクライシス(QLC)」という状態かもしれません。25歳から35歳ごろに多くの人が経験する、人生の方向を問い直す転機です。

この記事では、研究を進めた心理学者の論文をもとに、クォーターライフクライシスの意味と2つの型、乗り越え方を詳しく解説します。

クォーターライフクライシスとは?

クォーターライフクライシスとは、25歳から35歳ごろに多くの人が経験する、人生の方向を問い直す心理的な危機のことです。病気ではなく、大人として生き方を固めていく過程で起こる「発達上の転機」と位置づけられています。

まずは意味と年齢、経験する人の割合、似た意味のミッドライフクライシスとの違いを整理します。

QLCの意味と起こりやすい年齢

クォーターライフクライシスは「人生の4分の1(=クォーターライフ)」と「危機(=Crisis)」を意味します。この言葉は、2001年に出版されたアレクサンドラ・ロビンズとアビー・ウィルナーの著書をきっかけに広まりました。

研究として本格的に取り組んだのが、英国の心理学者オリバー・ロビンソン氏です。同氏は2015年の論文で、QLCを25歳から35歳ごろに起こる、多くの人が通る危機と位置づけました。

背景に学生から大人への移行期の変化があります。ロビンソン氏によると、18歳から25歳ごろは、仕事や恋愛で自由に探索しその後、仕事やパートナー、住まいを決めて生活を固めていく段階に移ります。

この移行がうまく進まないときに、危機が起こりやすくなります。

経験する人の割合

クォーターライフクライシスは、一部の人だけが経験する特別なものではありません。

ロビンソン氏が英国の成人1,023人に行った調査では、35歳以上の回答者のうち、25〜29歳で危機を経験した人が28%、30〜34歳では31%いました。20〜24歳の22%と比べて、どちらも高い割合です。

2025年に発表された8か国の調査では、2,247人を対象にQLCの経験を尋ねており、経験した人の割合は国によって40%から77%にのぼりました。

ミッドライフクライシスとの違い

ミッドライフクライシスという言葉も耳にするかと思います。

クォーターライフクライシスとミッドライフクライシスの大きな違いは、起こる時期と、向き合う問いにあります。

クォーターライフクライシスミッドライフクライシス
時期25〜35歳ごろ40代ごろからの中年期
主な問いこれからどの道を選ぶか、今の道でよいのかこれまで歩んできた道をどう生かすか
共通点選んだ役割に閉じ込められた感覚から始まることがある同左

ロビンソン氏は、中年期の危機も、選んだ役割に閉じ込められていることが多いと指摘しています。どちらも「自分の生き方を選び直す」点で共通しています。

クォーターライフクライシスのサインと2つの型

自分の状態を確かめることで、この先どう行動したらいいのか見えてきます。

この章ではまず、自分のいまの状態を一緒に確認していきましょう。

当てはまるかチェック

次の項目のうち、当てはまるものにチェックを入れてください。

□大きな問題はないのに、「このままでいいのか」と考えることが増えた
□同年代の結婚や昇進の話を聞くと、焦りを感じる
□今の仕事や恋人との関係を続けるべきか、迷っている
□やりたいことが見つからず、動けない感覚がある
□将来を考えると、漠然とした不安を感じる

2つ以上当てはまる場合、今の不安はクォーターライフクライシスの特徴と重なっています。

次に、自分がどちらの型に近いかを確かめてみましょう。

ロックアウト型とロックイン型

クォーターライフクライシスには、「思い描いた生活に踏み出せない」ロックアウト型と、「選んだ道から抜け出せない」ロックイン型の2つの型があります。

どちらに近いかによって、不安の中身も、取るべき行動も変わります。

ロックアウト型ロックイン型
感覚思い描いた生活に踏み出せない選んだ道から抜け出せない
例就職がうまくいかない、結婚したいのに相手が見つからない、経済的に自立できない今の仕事が合わないのに辞められない、恋人との将来が描けないのに別れられない

周りが結婚していくのに自分だけ進めないと感じるのは、ロックアウト型に近い状態です。

一方で、ロビンソン氏の調査では、25〜29歳の危機に多い出来事として、失恋、お金の問題、恋人や仕事に縛られていると報告されています。

30〜34歳では、失恋、仕事のプレッシャー、お金の問題、転職、家族との対立が多く挙がっています。

2つの型の表を見て、自分がどちらに近いかメモしておきましょう。

クォーターライフクライシスの4つの危機段階

ロビンソン氏は、2つの型それぞれの危機が、次の4つの段階で進むと説明しています。。

どちらの型も、段階3で「立ち止まる」「試す」時間をとることが、次の段階へ進む鍵になります。この4段階は、必ず順番どおりに進むわけではありません。新しい道を選んだあとに再び迷い、前の段階に戻る人もいます。

なお、日本語の記事では「5つのフェーズ」として紹介されることもあります。流れはほぼ同じで、区切り方が異なります。

この記事では、ロビンソン氏の論文にもとづく4段階で説明していきます。

クォーターライフクライシスが起こる3つの原因

クォーターライフクライシスが起こる3つの原因

クォーターライフクライシスが起こる主な原因は下記のとおりです。

  • 思い描いていた人生と違った
  • 同年代と比べてしまう
  • 理想と本音のずれ

この3つです。

どれも自分の弱さではなく、今の時代の20代から30代が置かれている環境から生まれます。原因を知ると、気持ちがちょっと軽くなります。
自分がなにに対して不安や焦りを感じていたのか、忘れないように当てはまった原因や内容をメモしておきましょう。

この後の章で紹介する乗り越え方のヒントになります。

思い描いていた人生と違った

学生のころ、こんな予定を思い描いていませんでしたか?

  • この時には、仕事もお金に余裕ができて旅行も行き放題!
  • 28歳には結婚して、翌年には第一子を出産する
  • 30歳までに、マイホームを持つ

この未来図と今の自分を比べて、「遅れている」「なんか違う」と感じていないでしょうか。

結婚や出産、住まいといった人生の大きな選択を決める時期は、以前より遅くなっています。それなのに、頭の中の「人生の予定表」は昔のままという人は少なくありません。

実際には、日本の2024年の平均初婚年齢は夫が31.1歳、妻が29.8歳でした。

ロビンソン氏は、20代に長い探索の時期を過ごせるようになった一方で、その後に生活を固めていくことが難しくなったと指摘しています。選べる道が多いほど、「この道でよいのか」と迷いやすくなります。予定表どおりに進んでいないのは、あなたが遅れているからではなく、時代の流れが変わったためです。

同年代と比べてしまう

人は、自分を評価するはっきりした基準がないとき、身近な他者と比べがちです。

これは、1954年に心理学者レオン・フェスティンガーが提唱した「社会的比較理論」で説明されています。客観的な基準が手に入らないとき、人は他者を物差しにして自分の能力や意見を評価する、というのがこの理論の中心にある考え方です。

SNSは、この比較をさらに強めます。米国の研究者ボーゲルらの2014年の研究では、Facebookをよく使う人ほど自尊心が低く、その背景には自分より恵まれて見える人との比較が多いことがわかりました。

「理想」と「本音」のずれ

クォーターライフクライシスの根っこには、「こうあるべき」という理想と、本当の気持ちのずれがあります。

ロビンソン氏が聞き取りを行った人の多くは、選んだ道が自分に合っていないと気づきながら、それを周りに言えずにいました。

辞めたい気持ちがある一方で、変わることは「責任ある大人として失敗すること」だと感じていたのです。その結果、外に見せる自分と内側の自分が分かれていく感覚を抱えていました。

周りの期待に合わせるほど、自分の本音わからなくなります。この状態が続くと、理由のわからない漠然な不安として表に出てきます。

クォーターライフクライシスを転機に変える

クォーターライフクライシスを転機に変えるには、まず「自分軸」を持つことが大切です。

自分軸とは、周りの期待ではなく、自分の価値観を基準に選択できる状態のことです。自分軸を取り戻すには、まず今の自分の現在地を知ることが欠かせません。現在地がわかれば、危機に直面しても、生き方を選び直すきっかけに変わります。

クォーターライフクライシスは、つらいだけの時期ではありません。ロビンソン氏の調査では、25〜34歳で危機を経験した人のおよそ半数が、その後に前向きな変化があったと答えています。

ここでは、危機を抜けた人に起こる3つの変化を紹介します。

変化1 自分の基準で道を選べるようになる

危機を乗り越えた人は、周りから与えられた役割ではなく、自分の内側の基準で道を選ぶようになります。ロビンソン氏の聞き取りでは、新しい仕事や生き方を選んだ人の多くが、「前よりも自分らしい」と感じていました。

たとえば、仕事を続けるか変えるかで迷ったとき、「周りにどう思われるか」より先に「自分は何を大切にしたいか」を考えられるようになります。同年代の結婚や昇進の話を聞いても、自分の道を進んでいると思えるようになります。

変化2 毎日の満足感が高まる

危機を抜けた人は、危機の前より、毎日の生活に満足感が高まります。ロビンソン氏の研究では、自分の生活を自分で動かしている感覚も強くなったと報告されています。

日曜の夜に感じていた「また1週間が始まる」という重たさが、少しずつ薄れていく。そんな変化をイメージしてみてください。

変化3 自分や世界への興味が広がる

危機の時期は、自分や周りの世界への興味が強くなる時期でもあります。ロビンソン氏らが2016年に英国心理学会で発表した研究では、クォーターライフクライシスの時期にある人は、そうでない人より自分自身や世界への好奇心が強いことがわかりました。

同氏が監修した英国の調査でも、この1年で危機を経験した人は、そうでない人より自分について新しく知ったことが多いと答えています。今まで気にとめなかったことに目が向きやすく、新しいことを始めるのにちょうどよい時期です。

ただし、危機を前向きな転機にできるかどうかは、どう向き合うかで変わります。

次の章では、2つの型それぞれの乗り越え方を紹介します。

クォーターライフクライシスを乗り越える方法

クォーターライフクライシスを乗り越える方法

QLCを乗り越える方法は、ロックアウト型とロックイン型で異なります。
2つの型は悩みの向きが逆なので、同じやり方ではうまくいきません。

ここでは型ごとの乗り越え方を紹介します。自分の型を思い出しながら読み進めてください。

ロックアウト型の場合:目標を立て直す

ロックアウト型の人は、もっとがんばるよりも、目標の立て方を見直すほうが前に進みやすいです。ロビンソン氏によると、この型の危機を抜けた人は、一度挑戦を休んで別のやり方を試し、目標の中身や大きさを変えていました。失敗が続いて自信がなくなるのは、この型ではよくあることです。

ステップ1 一度立ち止まって、ふり返る

同じやり方で挑戦を続けると、どんどん疲れてしまいます。これまでの挑戦を3つ書き出し、「何を目指して、どこでつまずいたか」を一言ずつ添えてください。

ステップ2 「本当はどうなりたいか」を書き出す

目標そのものではなく、その目標が叶ったら何がうれしいのかを考えます。本当の望みがわかると、そこへ行く道がほかにもあると気づけます。

目標本当はどうなりたいかほかの道の例
正社員になりたい収入を安定させて、仕事で成長したい

認められたい
契約社員で専門性を磨く、資格を取る

実績で評価される職場に転職をする
結婚したい安心して頼れる人と暮らしたい出会い方を変える

信頼できる友人との関係を深める
一人暮らしをしたい自分のペースで過ごしたい実家で自分の時間と場所を確保する

1人旅をしてみる

ステップ3 1か月でできる大きさにする

大きな目標は、1か月で達成できる短期目標を立てましょう。

「正社員になる」なら「気になる業界の人に1人話を聞く」、「結婚する」なら「新しい出会いの場に1回行ってみる」くらいが目安です。小さくても「できた」という成功体験が積み重なると、自分自身の自信がついてきます。

ロックイン型の場合:辞める前に、小さく試す

ロックイン型の人は、すぐに辞めたり別れたりする前に、自分の本音を確かめながら小さく試してみてください。ロビンソン氏の研究では、次の道を急いで決めた人が、結局また迷ってしまう例が報告されています。同氏が監修したガイドでも、仕事や関係を変えるような大きな決断の前に、まず小さく試すことをすすめています。

ステップ1 本音を1人に話す

ロックイン型の人は、「合わない」と感じていても、その気持ちを周りに隠しがちです。外での自分と本当の自分がずれたままだと、不安はどんどん大きくなります。

まずは信頼できる人1人に、今の気持ちをそのまま話してみてください。

ステップ2 「何が合わないのか」を分けて考える

「仕事が合わない」「いまの人間関係が合わない」をひとまとめにすると、辞めるか続けるかの二択になってしまいます。

次のように分けると、どこを変えればよいかが見えてきます。

  • 仕事の場合: 仕事の内容/職場の人間関係/働く時間や場所/会社の方針
  • 関係の場合: 価値観/一緒に過ごす時間の使い方/将来の考え方/お互いの役割

合わないのが1つだけなら、全部を手放さなくても変えられるかもしれません。

ステップ3 今の生活を続けながら、試してみる

現状を大きく変える前に、今の生活のまま試せることから始めてください。

  • 仕事の場合:気になる分野の講座に行ってみる、副業を少しだけ始める、社内で異動を相談する
  • 関係の場合:一人で過ごす時間を増やす、将来について一度ゆっくり話し合う

試してみて、気持ちが軽くなったか、変わらないかを確かめてみましょう。

その感覚が、次の道を選ぶときの判断の目安になります。試してみることも、自分を知る大きなヒントになります。

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よくある質問

A. 25歳から35歳ごろに起こりやすいとされています。望む役割に入れないロックアウト型は、学校を出たあとの21〜25歳ごろに起こりやすい傾向があります。

A. 1〜2年ほど続くことが一般的です。2025年の8か国の調査でも、QLCは感情が不安定になる移行期で、1〜2年ほど続くと説明されています。

A. 病気ではありません。多くの人が通る、生き方を選び直す転機です。ただし、気分の落ち込みが2週間以上続く場合は、医療機関や相談窓口に相談してください。

今日からできる最初の一歩

Re:Canvas

「このままでいいのかな」という不安は、あなただけが抱えているものではありません。25歳から35歳ごろに多くの人が経験する、クォーターライフクライシスという転機です。

今日できる最初の一歩は、その不安を感じた場面を1つだけ紙に書き出すことです。5分あれば取り組めます。書き出した言葉は、自分の現在地を知る手がかりになります。

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