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【INTERVIEW】働くことは人生の喜びを左右する。本当にやりたいことを仕事にするために。

池田陽子

Name

池田陽子

Work

やぎによる動物介在アクティビティ主催

Dream

やぎさんがのんびり草を食み、草花が生き生きと輝くリトリート施設をつくること

Wellbeingな人

公開日:

2024.06.14

ファイナンシャルプランナー相談業×動物介在事業。かけ算ビジネスのフリーランサーとして活躍する池田陽子さん。今回はそんな池田さんに、これまでの仕事を通して気付かされたことや今後挑戦したいことまでたっぷりとお話をお伺いしました。

ーー簡単な自己紹介とプロフィールをお願いします。

池田さん:池田陽子です。4人家族と猫2匹の暮らしでしたが、長女が大学1年になり春から一人暮らしを始めました。わたし自身は大学卒業後、 都内の医療系のサービス会社とレコード会社で、デザイン制作の仕事をしていました。毎回0から1を創る醍醐味があり、チームメンバーに刺激をもらい、没頭できる仕事でしたが、締切ぎりぎりまで上を目指すような働き方でしたから、結婚後出産育児と両立できないと思って退職をしました。その時31歳で、いまは仕事より子育てをしたいという思いもありました。2009年に夫が横須賀に転勤になったので、それからはずっと横須賀に住んでいます。結婚出産後は、会社には所属せず金融商品などは売らない、フリーランスのファイナンシャルプランナーとして家計相談を専門に取り扱っています。2021年から動物取扱業の準備をはじめ、2023年6月にみちくさラボを開業しました。みちくさラボでは、ヤギさんとのふれあいアクティビティを行っています。

ーー人生で大変だったと思うことはどんなことでしたか?

池田さん:子供が小学校高学年になったとき、子育てもひと段落したので、週3日の個人事務所の事務パートをしたのですが、その時が人生の谷間、だいぶ煮詰まった時期でした。私がしていたのは給与の計算をする仕事だったのですが、ひたすらタイムカードとにらめっこをし、手で勤務時間を集計する業務が割り当てられました。自働化が進んだ今の時代に、机に縛られ、コンピューターにすぐに取って代わられる業務に、人生の時間を捧げる。本当に今の自分がやるべき仕事なのかとみじめな気持ちになってきました。子育てでいったんキャリアの方向転換をしたけれど、このまんま人生終わるのかなと思うと、ものすごく怖くなってきたんです。“何のために生きてきて、どんな人生でありたいのか”と日々悶々としていました。働き始めてすぐに私にはとことん向いていない仕事だと気付いて悩んでいたのですが、久しぶりに仕事復帰をした母として、女性として、娘たちに背中を見せたいと思って方向転換することができなかったんです。

結局は、仕事を始めて輝いてるよっていう姿を娘たちに見せたかったのに、無理して仕事に行き、無力感と焦りでいっぱいで、働くことの楽しさなんて、子どもたちには一切伝えられず、体調もすぐれず、退職を決意しました。上司に告げた時には、背負っていた荷物を降ろせたように、本当にほっとしました。

人生のやりたいことと仕事が重なったら仕事が趣味になった

ーー働いている上で自分自身が満たされているという感覚がなかったんですね。

池田さん:そうですね、大学を卒業し、両極端の職場を体験したことで、“働く”ということは、人生の喜びを左右する重要事項だと気付けたことは大きな収穫だったと思います。職場によって自由裁量の余地がどれだけあるのか、上司や同僚との風通しの良さ、失敗を許容し挑戦者を応援する土壌など、文化がまったく違います。

しかし、入ってみないとわからない。自分の持ち味が発揮できる限界があると思うんです。私が今フリーランスになってよかったなと思うのは、自分で環境を作っていけることです。フリーランスであれば、仕事の効率を上げたいなら使い勝手のよいパソコンやキーボードを購入し、自働化できるサブスクを契約すればよいですし、早朝でも深夜でも仕事をして、自分の優先事項を譲ることなく働く時間も自分で決めることができます。そういう環境を自分で選んで作っていけるっていうことが、働いていく上でかなり重要なことだとその時気付きました。

小さい頃はお手伝いをしてお駄賃をもらったり、学生時代は飲食店でアルバイトをして、うまくオーダーをさばけたり、お客様とおしゃべりして、働くことがとっても楽しかったのですが、社会人になってから、気付いたら職場に期待されたことだけをやるようになっていました。自分らしく選択する余地がなかったり、おかしいと思っても変えられない。いつの間にか仕事を仕方なくやるようになっていたと思います。

フリーランスになり、どんなお客様と出会いたいのか、どんなサービスを届けていくのか、0から選べた時、やっと“自分の職業”が人生を掛けてやりたいことに変わって、願っていた人生と働き方が一致したんです。

今は“仕事が趣味”になっています。時間があれば、仕事のことを考えています。何を見ても、みちくさラボのやぎたちと掛けあわせたらどうなるだろうって考えています。たとえば、版画の画材を見たときは、アートとアニマルセラピーってどのような効果がある?誰に喜んでもらえる?と企画を考えてたりと、そうなると、他の趣味で時間を使うことが自然となくなってしまいました。

ーーーフリーランスとして働こうと思ったきっかけはどのようなものだったんですか?

池田さん:コロナ禍のときにオンラインのコーチングのスクールに入ったことが大きいですね。普通の主婦に何ができるのかって、うじうじしてたけど、年齢や居住地、キャリアに関係なく、自分の背景を受け入れ、武器にしながら活躍している人と出会いました。一気に視野が広がりました。同じ時期にYouTubeでフリーランスで起業する方法もたくさん紹介されていて、さほどハードルが高くないと知って、働きたい仕事場が無ければ作ればいいのかって、発想の転換が起きました。

また、コーチング関連の書籍を読んだときに、ひとつの質問が心を揺さぶりました。
「あなたがまもなく人生の終わりを迎える時に、どうして元気なうちにやっておかなかったんだと悔やまれることはありませんか?」という質問です。
このとき、小さい頃ヤギさんがいた帰り道の風景がパッと思い浮かびました。学校も楽しくない、人間関係をつくるのも苦手な子供時代。身近にいた動物たちのぬくもりに癒やされ、助けられてきたあの風景を再現したい。それがやり残したことだってっていうのに気づき、その気づいたことをコーチングの仲間に話したら、誰も否定せずに聞いてくれ、心から応援してくれ、夢を実現するエネルギーに変えてもらいました。信頼し合える仲間に出会えて運が良かったと思います。

やりたいことが決まってからは、どうしたら実現できるか、お金の計算をきっちりしました。ずっと家計管理をやっていて、FPとして勉強会を主催したり、これまで自分の家の経済的な状況を見える化し、分析、改善を繰り返し、向き合ってきました。
そのおかげで起業した際の生涯の収支を計算できたんです。私が会社勤めして定期収入をえなくても、家計のサイズを広げなければ娘たちは高校にも大学にも行けるだろうし、住宅ローンも終わっているから、リスクがないって分かりました。これでもう“行くぞっ”というゴーサインは出せました。

ーーお金の不安は誰もが持っていると思いますが、知識があるからこそチャレンジができたんですね。

池田さん:ヤギさんを飼いたいっていっても、3LDKのマンション暮らしなら難しいって思いますよね。その状況でやりたいと思ったらどうすればいいかと考えたんです。3000万円の土地を探しローンで借り入れしなくても、出来る方法はないかと。

賃料を除けば、初年度で70〜80万円ぐらいが飼養施設に必要だと分かりました。家計管理と同じように、予算の枠の中でできることを考えていた時に、軒先を借りてカフェやお店をやっている人の記事を見つけました。自分の店舗がなくても軒先を借りればいいんだって思って、ヤギさんがいると互いにメリットのある事業者を探していたんです。

なるべく友人にも自分の夢を話すようにしていて、そうしたら、ヤギさんが飼えそうな古民家のシェアスペースがあるって教えてくれました。すぐに出かけていき、「ヤギさんを飼いたいんです」って言ったら、初めて会った代表理事が「ここは大人が夢を叶えるところだから」と、二つ返事で応じてくれました。

生き物を飼うにあたって使用条件を明記し同意書を交わすなど、契約関係は司法書士さんに頼み、数万円はかかりましたけど、家賃としては無償で借りることができました。大きな元手がなくても、自分が動かせる予算の範囲を先に明確にして、条件のなかで現状を突破する手段を探していくことで一歩ずつ進みました。工夫すればできるって信じたからこそ、できる道が見つかったんだと思います。これは家計管理をしてきて、実体験から得られた信念でした。

まずはやってみようと思えた司法書士さんの言葉

ーーそこからスタートして、現在の活動に至るまでに苦労したことなどがあれば教えてください。

池田さん:場所は決まりましたが、シェアスペースのなかでどのように動物を飼育していくのか、自分の描いているビジョンが成立するのか不安を感じ、一度交渉をストップした時期もありました。その時も、司法書士さんが「いきなり思い通りの夢が叶うことはまずないよ。いまが50%、60%でもいいから、次でもっと理想に近づければいい。まず、経験を積める舞台を得られたことをチャンスだと思ってみたら」って言ってくれたんですね。
この言葉で、まずはやってみようと思うことができたんです。

古民家では、不登校や学童の子たちの居場所を別団体が運営しています。ヤギさんがいることで、ここに通う子どもたちが、みちくさを楽しみ、心を休めてくれたらいいなと思っています。

学校や家庭とも違う、自分らしさが出せる場所であってほしいです。

現在は、出張と受け入れで、やぎを使った動物介在活動をしています。

幼稚園出張で子たちにエサやりをしてもらったり、小学校の子たちにはやぎを連れた出前授業として、やぎ除草と里山保全の取り組みをSDGs分野の学びとして提供しています。活動の中で、たまに昔の自分みたいな子に出会うんです。いつもおとなしいのに、ヤギさんが来たら何度も何度も餌あげてて、みんなの列を押し抜けていくような子じゃないのにって、幼稚園の先生が驚いていることもあるんです。普段は出来ない体験で自分の好きを開放している瞬間を見れることがうれしいです。

ーー子供たちは触れ合って初めて動物が好きだと気付くのですね。今後はどんな活動をしていきたいですか。

池田さん:大きなところでいうと仕事が楽しい人を増やしたい。私は小さい頃動物が好きだったのに、それが仕事の選択肢に上がらなかったのは、学校でも、家庭でも「憧れの暮らし方と、食べていくための職業は別」という空気があったからじゃないかと。自分も違和感なく、それを受け入れてました。

体験やボランティアに来てくださる方たちはやっぱり動物が好きな人が多いですが、それを職業として、自分の人生の真ん中には置いていない。
好きなことを仕事にしてやってみたいという声を聞くと、私がやってるような活動が事業として持続して、ひとつの選択肢になってもらえたらいいなっていう気持ちがあります。子供たちにも職業として選んでもらえるような活動をしていきたいという夢があります。

ーー大人もヤギさんと触れ合うと学びになることが多そうですね。

池田さん:私も意外だったのですが、大人にも癒しの効果を発揮しています。仕事や家庭のこと、将来について悩まれている方が、結構リピートしてくださることも多いです。庭にテーブルを出して、お菓子をお出ししてお茶をしながら、おしゃべりをさせていただくこともあります。

無心に草を食んでいるヤギさんを見ると、生命力みたいなのを感じるそうです。元気が出ましたって言ってくれるんです。

その方の人生についてぽつりぽつりとお話しをしてくださり、人生は思うような場所に最短距離ではいけないけれど、のんびりみちくさして、方向転換してもいいと思っていて、みちくさラボのヤギたちが、ひと役買っているような気がしてうれしいです。

私も小さい頃にハマったのは、本当はダメですが、プリントをあげたら、ヤギさんが食べて消えてなくなった経験があったからなんです。どんどん消えてなくなっていくのを見ると、気持ちがすごくスッキリするんですよ。差し出したものをおいしそうに食べてくれて、自分がこの子を喜ばせる力があると思えたし、自分の存在そのまんまを受け入れられたなっていう感覚があるんですよね。そういうところが大人にとっても癒しになるんだと思います。

ヤギさんのいるリトリート施設を作りたい

ーーこれからチャレンジしたいことはありますか?

池田さん:ヤギさんのいるリトリート施設を作りたいです。時間帯によってヤギさんはさまざまな表情をします。朝は食欲旺盛、昼間はうとうとと無防備な顔をして反芻。夕方はおやつのおねだりですり寄って来ます。1日をのんびり過ごして、好きな時間にヤギさんを眺められる施設があるといいなと思っているんです。普段は忙しい方が遠方から来てくださったら、お泊りも兼ねて欲しいですね。三浦半島は都心にも近く、海の眺めもいいし、すぐ近くに森もあるのでヤギさんの餌にも困らない。リトリート施設を作るのは壮大な夢かもしれませんが、この三浦半島は可能性に満ちていると思いますね。

ーー最後に、池田さんにとってウェルビーイングな瞬間を教えてください。

池田さん: そうですね、例えていうと、ひとりで大好物を好きなだけ食べたとしても、わたしにとってのウェルビーイングではありません。これってオイシイよねってだれかが自分の価値観に共感してくれたり、分け合って一緒に食べてニコニコできたり、違う味も作ってみようかとワクワク発展したり。

共感した仲間が集まり、人との繋がりの中で、その幸せが層をなして豊かな幸福感になって増殖していくものだと思います。

ヤギさんの事業を始めて、「メイ太とくりがかわいいね」、「むしゃむしゃ食べてて、なんか気持ちいいね」「いい景色だね」と言ってくれる仲間がいて、自分でその環境を作れると信じていること。その瞬間がウェルビーイングだなと思います。

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